第4話 優しい人たち
「答えは決まった?」
「はい、霊狩りの絆に入ります」
「おお、よかった。これからよろしく……名前忘れたんだったね。名前はこれから考えよっか」
「ねえ、半妖さん」
「……?」
楓が無言の時間を終わらせるため、それと純粋に必要な会話をするために少女に話しかけた。
「あなた、刀持ってましたよね」
「はい」
「あの刀は回収して鞘に納めてあるから安心してくださいね」
「わざわざありがとうございます」
「私からは後もう1つだけ。実は私も半妖なんです」
「そうですか」
少女は特に驚くでもなく、淡々と楓の驚くべき告白を受け流した。
楓はあまりの反応の薄さに内心驚きながら、次の言葉を探した。
「あなたの体には霊術が刻まれていないんですか?」
「使えないので分かりません」
「……すみません」
「まあ、トイレは部屋出てリビングに出るんだけど、そのまま左に歩いたらあるから。お風呂の準備ができたらまた来るね。あ、やっぱり楓に来てもらうかも」
「私ですか?」
「やってくれる?」
「……はい、頑張ります」
結局楓が半ば押しつけられる形で風呂が沸いた報告をする係になった。
「じゃあそろそろ行くね。何かあったら私を呼びに来てね。2階の突き当たりが私の部屋だから」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、私たちはそろそろ部屋に戻るね。着替えとかは楓が後で持ってきてくれるからね」
2人が退室したのを確認した少女は目を閉じ、思考することに脳のリソースを全て捧げた。
「良い人たち……」
(見ず知らずの自分を助けてくれた霊狩りの絆の人たち。これから私はあの人たちと霊狩りとして活動していくことになる。
喜ぶべき事のはずなのに私は全く心が動かない)
「はぁ……」
少女は心が欠けてしまった自分にため息をつきながら楓が来るのを待つのだった。
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