第3話 半妖は大歓迎
「……うっ」
「おっ、目覚ます?」
見たことの無い天井。今少女が見ているのは病院の天井では無さそうだ。
「ここは?」
「意識もしっかりしてる。問題無さそうだね」
少女が横になっているベッドの傍らには包容力のありそうな雰囲気を放つ女性と、先ほど彼女の命を救った楓という少女がいた。
「助けてくれたんですか?」
「うん、私が全部治したよ」
「そうですか。ありがとうございます」
感情が全くこもっていない機械的な棒読みで少女は答える。
彼女には感情がないのでそれも当然のことだが。
「まずは自己紹介しよっか。私は
「私は
「あなたの自己紹介も聞かせて欲しいな。あと所属してる組織も」
「名前は……忘れました。17歳です。組織にも所属していません」
「今何て?」
「組織には所属していません」
「その前」
「17歳です」
「もう一声」
「名前は忘れました……?」
「……」
「……」
2人は絶句している。自分の名前を忘れるという異常過ぎる少女に対して。
「……それにしても、霊狩りの絆ってだっさい名前だよねー」
少女は常識が欠けていて、少女のタブーらしきものに触れたから話題を変えたという椿の計らいに気づいていない様だ。
「あれ? まだ意識朦朧としてる感じ?」
「……あなたが決めた名前ではないんですか?」
少女はようやくこの質問がもつ2つの目的の内の1つにである意識の確認に気づいた。
意識がはっきりしていることを示すために少女は答えを返した。
「違う。私は2代目のリーダーだからね。前のメンバーは皆死んじゃったんだよね。面識ぜんぜんないから別にいいけど」
「前の組織とは人間が総入れ換えになったんですね」
「そういうこと」
椿は適当にそらした話題をこれからの話に軌道修正する。
「それでそれで、あなたに提案があるんだけど」
「何ですか?」
「あなた、霊狩りの絆のメンバーにならない?」
「……私が?」
「そう、あなたが」
「私は霊術が使えませんし半妖であること以外何の取り柄もありませんよ。メンバーに加えても邪魔なだけです」
「あなた半妖なの!?」
「なんですか、いきなり大声出して」
椿は少女が半妖であること、そしてあまりの自己肯定感の低さに二重で驚いている。楓も驚きを隠せていない。
「……そっか、半妖なんだね。ならぜひ私達と一緒に活動して欲しいな」
「私の取り柄はそれだけですよ?」
「仮にその取り柄が無くても霊力があれば十分。霊狩りは霊力を持ってないといけないからあなたは貴重な人材であることを自覚した方が良いと思うよ」
「……はい」
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