第1話 孤独に戦う少女

用語の詳しい解説は1話の上にある用語・設定解説を見てください。






 スパアァァン。

「これで……217体目。……多すぎ」


 何年も前に人が寄りつかなくなってしまった廃ビルを刀を握りしめた1人の少女が駆け回っている。

少女はセーラー服を身に纏っていて、容姿からは女子高生であることが読み取れる。


 少女は先ほどからこの世のものとは思えない異形の化け物たちと廃ビルを舞台に戦いを繰り広げている。


 化け物は無限とも思えるほどに斬っても斬ってもまた湧き出てくる。

終わりが見えないこの現状が少女を心身共に追い詰めていく。


「小賢しい」

角を曲がり見えた化け物の群れに迷い無く突っ込んでいく。

目にも止まらぬ速さで前方へ走りながら刀を振り回し、化け物たちを全滅させた。


「……273。……本体が見つからない」

少女は化け物を捌きながら大量の化け物たちを放っている本体を探していたようだ。


「なっ……」

本体を探して再び走り回っていた時、壁を突き破り巨大な手が少女を襲った。


「……ぐっ」

間一髪刀で攻撃を防いだが、相手の力の強さに押し負けて刀を弾き飛ばされてしまった。

弾き飛ばされた刀は勢いよく天井に突き刺さり、少女は戦う術を失ってしまった。


 少女に不意打ちしたのは先ほどまでの有象無象とは比べ物にならない強さと風貌の化け物だった。これがこの場所で少女が探し回っていた本体なのだろう。


「……っ!」

逃げようと一瞬で立ち上がりながら地面を踏み込んだが、その場から動く前にさらに化け物から攻撃を受けてしまい、先ほどまでもたれかかっていた壁と共に外へ飛ばされてしまった。


「……痛」

少女は3階から落下してしまった。この高さから落ちた場合、死なずとも致命傷は避けられない。

普通の少女だった場合の話だが。


 先ほどから少女が戦っているのは怒りや憎しみなどの負の感情が積もり積もって誕生した"悪霊"と呼ばれる存在である。

少女はそんな霊を視認したり、霊に攻撃するための"霊力"というものを産まれつき持っている。

今のは霊力を体の強化に利用して地面に激突する衝撃から身を守ったのだ。


 しかし、落ちる前の攻撃で右肩にダメージを受け、彼女は刀を握れなくなってしまった。

この負傷が無くとも刀は3階の天井に突き刺さったままなのでどのみち詰んでいる。


(ここで終わり……)


少女は完全に希望を捨てて諦めムードに入ってしまった。


その瞬間――。


「ギィアアエアアツッアアッ!?」

悪霊が少女の目の前で突然炎上を始めた。










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