◆最強の秘密

 仕度を進めていく。

 大体の行先を決めた。これでヨシ!


 じっちゃんには途中まで送ってもらうことにした。さすがに一日移動をお願いするのも悪い。


 少しして準備完了。

 しかし、灯が困った顔をしていた。……あれ、変だな。



「立ち尽くしてどうした?」

「いや~、そういえば私服がないなって。制服しかないや」

「そうだったな。昨日は家に帰ってないもんな」

「うん。面倒だけど一度帰ろうかな」


「それじゃ、じっちゃんに頼もうか」

「そうしてくれるとありがたいな」



 まずは灯の家へ向かうことになった。

 玄関へ向かうと、すでにじっちゃんが待機していた。気が早いな!


「待っていたぞ、正時」

「すまんすまん。じっちゃん、まずは灯の家へ向かってくれると助かる」

「……む? なるほど、着替えに行くのだな」

「そそ」


 灯の制服姿を見て察してくれたようだ。

 話が早くて助かるぜ。


 さっそく駐車場まで向かい、じっちゃんの軽バンに乗り込んだ。



「よろしくお願いします。お爺様」

「うむ、任せな。灯ちゃん!」



 ノリノリで発進するじっちゃん。ナビは灯に任せた。


 俺の家から車で走ること十五分ほど。

 ついに灯の家というか豪邸に到着。

 俺は一度だけ来たことがある。



「じゃ、着替えてくるけど……あ、せっかくだし正時くんも来る~?」

「え、マジ!」


 だけどなぁ、じっちゃんを待たせることになるしなぁ。なんてジロジロ視線を送っていると、じっちゃんは察してくれた。



「正時。ワシのことは気にせんでええ。二人でイチャついてこい!」

「ちょ! じっちゃん……!」

「遠慮はいらん。ワシャ、車の中で海外ドラマでも見て時間を潰しておる」

「そ、そうか。ありがとう」

「うむ」


 じっちゃんに感謝しつつ、俺は車を降りた。

 ついに灯の家へ入れるのか。


 この時をずっと待っていたような気がする。

 それに単純に興味があった。

 この豪邸の中はどんな風になっているのかなと。それと灯の趣味だとか秘密を知れる良い機会だ。こんなことは滅多にないだろうし。


「はじめてだよね。家に招くの」

「そうだな。今まで入ったことはなかった」

「ちなみに男の子を入れるの初めて」

「マジで」

「うん。ちょっと緊張する」


 そう言いながらも灯は俺の手を握ってきた。……良いのかな。家族とかに見られたら説明が面倒そうだけど。いや、どのみち話さなきゃならないことか。


 門を抜け、庭を少し歩く。


 ――って、まてまて。

 普通の家よりも玄関までが長いぞ……!



 そこそこ歩いてやっと玄関に。

 扉はセンサーか何かに反応して自動で開いた。なにそのハイテク!



 すでに広い空間が広がっていて俺はビビった。犬と猫が出迎えてくれて、更にビビった。じゃなくて、可愛い。

 ポメラニアンとアメリカンショートヘアか。



「へえ、ペット飼ってるんだ」

「そうなんだ。ママが動物好きでね。わたしもだけど」



 白いモコモコの小型犬とまだ子猫のアメショが仲睦まじい。あとで写真を撮らせてもらおう。


 微笑ましい光景を見ながらも、灯の家に上がった。



「お邪魔します」

「こっちね」

「お、おう」



 廊下もずいぶんと広いな。階段を上がって二階へ。部屋がいくつもあって、奥に灯の部屋はあった。



「ここがわたしの部屋。入って」

「いいの?」

「うん。大丈夫だよ」

「分かった」


 遠慮なく俺は灯の部屋へ。

 すると意外な中身に俺は目ん玉が飛び出た。な、なんだこりゃ~~~!?



「……あはは。やっぱり、引くよね」



 灯は複雑そうに笑った。

 いや、これは確かに驚くというかビビった。



「灯、筋トレマニアすぎでしょ。これ、ジムじゃん……」



 部屋の中にはジムに置いてあるようなトレーニングマシンがいくつも設置されていた。

 ランニングマシン、フィットネスバイク、クロストレーナー、ステップマシン、アブドミナルマシン、チェストプレスマシン、ラットプルダウンマシン、ショルダープレスマシン、レッグエクステンションマシン、レッグカールマシン、レッグプレスマシン……ああ、もうキリがないッ!



「……うぅ」



 恥ずかしそうに涙目になる灯。

 さすが鍛えまくっているだけある。強さの秘密はこれか……!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る