メイド

 僕と文化祭を巡った後の蓮夜は。


「この料理、もっていってくれ」


 しっかりとメイド服を着こなし、キッチンの番人となっていた。

 慣れた手つきで料理を作っている蓮夜は周りと比べてはるかに仕事の速度が速かった。


「……蓮夜くんってこんなに料理上手かったんだね」


 そんな蓮夜を前にして周りのクラスメートたちが感嘆の声を上げる。


「当たり前だろ。俺は輪廻と小学生の頃からの付き合いだぞ。あいつに引っ張られる形で自然と料理の方もうまくなっていたわ」


 それに答える蓮夜の言葉は簡潔だった。

 確かに僕はちょいちょい蓮夜を引っ張って料理を手伝わせていたりしていた。

 懐かしいね……小学生くらいの話だろうか。


「そんなことはいいから早く仕事しよう……遅く来た俺が言うのも何だけどな。仕事はまだまだあるわけだろ?」


「そ、そうだね……ありがとっ!蓮夜のおかげで結構スムーズにいけそうだよ」


「いや……クラスの出し物だというのにここまで大したこと出来てなくてむしろ俺が謝るべきだ。これからはそれを払しょくするように頑張る……接客はともかくとして料理の面に関しては任せてくれ」


「うん、頼りにしているから!それじゃあ、私はここらの料理をもっていくから」


「任せた」


「はーい」


 蓮夜との会話を手早く済ませたクラスメートは意気揚々と出来上がった料理をテーブルの方に運んでいく。

 雰囲気としてはかなり良さそうだった。


「……」


 そんな中で、僕は特にやることがない。

 料理の腕はここのメンツで飛びぬけている自信がある。

 僕が己の腕を振るえばキッチンに立っている面々の数を半分にするだけでなく、料理の質を一段階上げられるという強い自信がある。


「暇やなぁ」


 だが、ここはメイド喫茶。

 野郎はいらないのである。野郎が料理を作ればその価値が落ちてしまう。

 ということで僕の仕事はない。

 接客をやるのはさらに論外だと言えよう。


「ふわぁ」


 僕は監督かのように座りながらも何もせず、あくびを浮かべるのだった。

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