オムライス

「ほい、オムライス。しっかりと噛んで食べろよ」


「わぁーいっ!ありがとぉ!」


 手際よく料理を進め、オムライスを作った僕はあゆねぇへとオムライスを渡す。

 確か、彼女に初めて作ったあげた料理もオムライスだっただろうか?

 もうこの料理を作るのも手慣れたものである。


「ふぅー」


 そして、個人用に淹れたコーヒーをもって僕は彼女の対面の位置へと座る。


「おいしっ。料理の腕は全然落ちていない!さすがだね……こんなきれいでおいしいの私じゃきっと作れないだろうなぁ」


「当たり前でしょ。ほぼほぼ毎日のように三食作っているのだから」


「すっごいわよねぇ、本当に偉いわ。そしておいしっ!」


 僕はもぐもぐとオムライスを食べているあゆねぇを眺めながらコーヒーをすする。


「それにしても会ったときから思っていたけどなんかずっと暗い顔をしているね?何かあったの?あの人たちから聞いたよ?あれなんだってね。自分の学校の人たち全員が噂のTS化してしまったのでしょう?」


「口に入れたまま喋らないで?汚いから」


「そこらへんで悩んでいるの?」


 だが、そんな僕の言葉を無視してあゆねぇは勝手に話し続ける。

 

「わかるわよ。私の今の上司がTS化。今までウザくてウザくてしょうがなかった禿がなんか急に幼女化して!」


 ……なんだ?中年のおっさんはTS化する際、幼女になるという縛りでも課せられているのか?

 幼女になる率が高すぎるにもほどがあるだろう。


「のくせ、中身はまるで変わらない。幼女の姿でネチネチ嫌味を言えるのもこれはこれでストレスなのよね。本当にきしょくてきしょくて」


「幼女ならまだいいでしょ。メスガキだよ?」


「あー、だめだめ。あの幼女には萌え要素は微塵もない。あのネチネチはみんなにとっての悪夢、社会人にとっての悪夢よ。本当に最悪のものね。簡潔に言って死ねばいいとすら思っているわ。もう本当に死ねばいい。直接的な罵倒のなんて素晴らしいことか。ネチネチとした嫌味は本当に最悪なのよね」


「……さよか」


 僕はあゆねぇの言葉に何とも言えない感情を偉大ながら頷く。

 なんで僕は社会人の愚痴を聞かされているのだろうか?本当に意味が分からない。


「あっ、それで君の話だったね」


「別に僕はいいよ?そんな相談することもでない」


 僕から話を聞き出そうとするあゆねぇに聞くなと声をかける。


「いいじゃん!聞かせてよ!目上の人間に相談するのも、れっきとした一つの解決策なのよ?」


 だが、それでもあゆねぇはくらいついてくるのだった。

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