男女

 相談するつもりはない。

 そうはっきりと宣言したつもりであるが、それでも食い下がってくるのが実に面倒なあゆねぇだ。


「……はぁー」


 彼女に根負けした僕はため息を吐きながら言葉を話す。


「僕の友人がTS化したのだよ。これだけならよかった。問題はここからだね。その子の過程にちょっとした問題があったみたいでね。彼の母親が娘を望んでいたみたい。それで、その自分の望みを勝手に友達の方に押し付けていた」


「……ありゃ」


「それに僕の友達はずっと反発し、反抗期も相まって本当に憎んでいたのだそうだ。そんな中で、自分がTSしてしまった。己は男だという強い意志とは相反する己の体。そして、徐々に心までもが女性の方に近づいてきている。それに深く憎悪しているみたいでね」


「何を悩んでいるの?」


「対応の仕方かな。僕は、どう接してあげればいいのかに悩んでいる、男として扱うのか、女として扱うのか……性格まで変わるなんて面倒なことがなければ最高だったのに」


「結局のところ、男も、女も大して変わらないわよ?有能なやつは有能だし、馬鹿なやつは馬鹿。SNSではちょくちょく性差に関する話が出ているけど……基本的に男の問題として語られているのも、女の問題として語られているのも、そのどちらも純粋にそいつが馬鹿でアホだったというだけで基本的に済むわ」


「……それはちょっとひどくない?」


「でも、世の中はそんなものよ。別に女の子のような恰好をしている男もいるし、男の子のような恰好をしている女もいる。別に何をしようとも自由じゃない。男だとか、女だとか、そんなことに縛られているなんてもったいないわ」


「……」


「貴方はこれまで通りに友達として接してあげなさいよ。男だろうか、女だろうか、友達は友達でしょう?悩んで変えちゃだめよ。友達なんて適当に笑い飛ばしなさい。女っぽいことをその子がすれば普通に笑い飛ばせばいいのよ。あれでしょう?貴方が言っている友達って蓮夜くんでしょう?」


「そうだね」


「なら、平気よ。笑い飛ばして。それでこじれるほどの仲ではないと、はたから見ている私が断言するわ」


「……」


「ちょっと体が女の子で、ちょっと性格が女の子っぽくて、もしかしたら性愛の対象が男の子かもしれない、ただの男の子よ。貴方が悩む必要はない。友達であることには変わりないのでしょう?」


「それは当たり前」


「なら、そのままでいいのよ」


「そういうものなのか」


「そういうものなのよ」


「そうか……」


 僕はあゆねぇの言葉に頷きながら、コーヒーを口に含むのだった。

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