プリクラ

 蓮夜と別れた後の僕は格ゲーエリアを後にして、クレーンゲームらへんにいるであろう陽太を探して歩き回っていた。


「……あれ?いなくね」


 だが、クレーンゲームが集まっているエリアで陽太を見つけることができなかった僕は首をかしげながら彼女の捜索範囲を広げる。


「……あっ」


 もう諦めて格ゲーのところに戻ろうか。


「いたいた」


 そんなことを僕が考えて始めていたタイミングで学校のカバン以外は何も持たずに立っている陽太を見つける……何も取れていないのかな?


「やぁ、陽太」


「……っ!?り、輪廻。あれ?どうしたの……?蓮夜と格ゲーしているんじゃなかったの?」


「あいつがトイレで離席したな。だから陽太の方に来ようかと思った」


「そ、そうなんだ……えへへ」


「それで?陽太はこんなところで何をしていたんだ?」

 

 彼女が立っている周りにクレーンゲームはない。


「……いや、クレーンゲームの前にやりたいのを見つけちゃって」


「やりたいの……?もしかして、プリクラ?」


 陽太が立っていた場所。

 それはプリクラが集まっておかれているエリアから一歩離れたところであった。

 入り口のところと言っていい。


「そ、そうなんだよね……ちょっと、プリクラを取ってみたくてぇ」


「……プリクラってちょっとだけ古いイメージがあるのだけど」


 ずいぶんと混雑しているプリクラエリア。

 これらにいるお客さんの多くはおそらくTSを最大限楽しんでいるおじさんたちなのではないだろうか?TSに喜ぶ元冴えないおじさんたちはずいぶんと多くSNSなどで見られたし。

 ただの僕の偏見の可能性もあるけど。


「いいじゃん!それでも……小学生の時からずっと入ってみたくて。で、でも僕は男の子で、なおかつ小学生の頃は勉強漬けで友達なんてほとんどいなくて。中学生からは男子校。ここに来るまで結局のところ一回も撮れていないのだよぉ!せ、せっかく女の子になったのだし、今ならぼ、僕でも撮れるかなぁって思って」


「そっか。それじゃあ、僕と一緒に入る?傍から見たらただのカップルだし、そんな違和感ないと思うが」


「カップ……っ!?」


「それで?どうする?一人で撮りたいのなら僕は格ゲーのところに戻って蓮夜がトイレから戻ってくるのを待とうと思っているのだけど」


「お、お願いします……っ!」


「うし、それじゃあ二人で撮ろうか」


 陽太の言葉に頷いた僕は彼女と共に男子一人での入場が許されない。

 男子高校生であれば決して縁がなかったはずのプリクラエリアへと入っていくのだった。

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