ゲーセン

「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああ」


 自信はあった。

 だが、それでもその自信は完全に崩れ去った。


「ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ」


 僕は蓮夜と陽太を相手に何もできずに無断にも敗れ去った。

 自分の前にある格ゲーの筐体にはLOSEという文字がくっきりと刻まれている。


「へっ。この程度で勝てると思っていたなら勘違いもいいところだぜ」


「そうだね……まだまだ僕たちの方が強いよね!」


 そんな僕を前にして蓮夜と陽太の二人は全力で煽り散らかしてくる。


「……くそぉ!」


 僕はそれを前に歯ぎしりしながら怒りをあらわにする。

 なんという、何という話だ。


「この屈辱必ずや返してやる」


「それを言ってもう何年だ?」


「ずっと聞いている気がするな」


「……ぐふっ」


 負け犬の遠吠えさえも許されなかった僕は力なく倒れる。

 倒れることしかできなかった。

 なんとひどいことだ。


「あー、よし……じゃあ、僕はちょっとトイレ行ってくる。そのあとは、ちょっとクレーンゲームとかやってくるね……ちょっと欲しい小物を見つけちゃって」


「……おう、行ってらー」


「ちゃんと取れよー」


 僕が心の中で泣いている間に、陽太が自分たちの元からちょっとだけ離れる。


「うし、それじゃあタイマンか」


「今度こそは勝つ」


 陽太がいなくなった後も僕は蓮夜と格ゲーを続ける。


「……随分とここも静かになったな。プリクラの方とは違って」


 そんな最中において、蓮夜がぼそりとつぶやく。


「陽太の方はまだ普通に格ゲー好きだしよくやっているだろ?そんな神経質になることないでしょ」


「……俺はまだ何も言ってねぇ」


「でも、僕の答えは満点でしょ?」


「……死ね」


 僕から顔をそらして答える。

 その蓮夜の態度が何よりも正解であることを示していた……にしても、本当に減ったものだ。

 前までは多くの男たちで賑わっていた格ゲーのエリアも今ではさみしいものである。

 本当にTSした割合は一万分の一なのだろうか?

 体感はもっとTSしているような気がする。


「俺もトイレ」


 そんなことを考えている間に僕はあっさりと敗北。

 そして、これが終わると共に蓮夜も立ち上がる。


「お前はちょっくら陽太の方でも見にいってやれよ。クレーンゲームは得意だろ?」


「その『は』ってのは余計じゃない?まぁ、いいけど。それじゃあ僕はちょっくら陽太の方に行ってくるわ」


「おう」


 蓮夜がトイレの方に向かうと共に、僕はこのゲーセン内にいるであろう陽太の元へと向かうのだった。

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