飲み物

 男、男していた空間からずいぶんと女の子らしい空間へと。


「……困るなぁ」


 どんとんと変わっていく自分の高校の中で僕は何とも言えない声を漏らす。

 ここ最近は色々と考えなければならないことが多すぎる。

 

「……特に蓮夜の方」


 僕は自販機にお金を入れながら、考えるのは蓮夜のことである。


「どう考えても女子のものだよな」


 さっきの反応。

 あれは明らかに女子のものだった。

 パンツが見えてそんな気にする男子はまず珍しいし、それが気の知れた友人ならなおさら。一緒に銭湯へと行ったこともある間柄な中で、今さらパンツが見えて恥ずかしがなんてないだろう。


「あれだけ男であることにこだわっていたのに」

 

 彼もちゃんと心の方は女の方に寄っていっているんだよなぁ……どう、接するべきか困る。

 一番、心苦しくて葛藤しているのはまず間違いないなく蓮夜の方であろうし。


「はぁー」


 僕は深々とため息を漏らす。


「なんでこうも両極端なのか」


 陽太の方はその心も、最初から女の子であった。

 だからこそ、どう接すればいいかが簡単にわかって悩む必要がないのでずいぶんとやりやすい。


「や、やぁ……輪廻」


 ちょうど、僕が陽太のことを考えていた中で、彼女が僕の方へと近づいてくる。


「おっ、陽太。君もジュース買いに来たの?」


「うん、ちょっと喉が渇いてね」


 僕の言葉に陽太は頷く。


「生理の方はもう大丈夫なの?」


「うん、大丈夫……僕ってばもともと生理が重くなかったみたいで。かなり重そうな蓮夜に比べればずっと」


「あぁ……」


 僕は蓮夜の生理事情を思い出す。

 顔面蒼白、マジで死ぬんじゃないかって思うくらいに体調が悪そうだったからな……蓮夜が生理の時は。

 それと比べればまだ、陽太の方は元気そうだ。

 というか、そもそもこうして生理について男女が普通に話し合うのは健全なのだろうか?

 中高一貫と男子校なので勝手がわからない。

 まぁ、生理で相手が辛いってことはこちらの方も知ってあげていた方が色々と配慮もできるし、普通は話しているか。


「何か暖かい飲み物でもいるか?ここは奢るよ」


「……っ、え、えへへ。それじゃあお願いしちゃおうかな」


 僕の言葉に頷いた陽太はすすっと、距離を詰めてきてそのまま自分の隣に立ってくる。


「どれがいい?好きに選んでよ」


「そ、そうだなぁ……それじゃあ、これがいいかなぁ」


「おっけ、レモンティーね……僕は普通に緑茶でいいかな」


 何を買うか決めた僕は自分のポケットからスマホを取り出すのだった。

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