学校生活

「なぁー、輪廻。黒板届かなくなってしまったから消してくれないか?」


「はいはーい」


「……すまない。輪廻。以前まではこれくらい運べたのだが……幼女の今となってはちょっと厳しくてな。どうか運んでくれないか?」


「なぁ、輪廻。ちょっと昼食もらってくれないか?以前と同じ量を買ったらちょっと食えなくて」


「まぁ、これくらいならいいよ」


「輪廻ぇー、たのむぅー!!!ちょっと書庫の掃除手伝ってくれ。本棚を押せないんだぁ!」


「本棚だね?わかったよ」


「なぁ、輪廻……」


「輪廻……」


「ね……」


 多くの男手とともに回っていた男子高校。

 そこでいきなり男手が消滅した結果、唯一の男子生徒である僕へとお願いごとが集中することになっていた。


「あぁ……さすがに頼られすぎじゃないか?僕」


 いろいろと雑用に回されている僕は疲れを隠さずため息を漏らす。


「くぅ……すまねぇ。手伝えることがあればよかったんだけど……俺には、ちょっと無理だ。この体がちょっと思ったよりも貧弱で。これまでのように軽トラを持ち上げられなくなってて……」


「それは元のお前がおかしいだけだし、僕にも無理だ」


 口惜しそうな蓮夜の言葉を一蹴した僕は自分の水筒のほうに手を伸ばす。


「……っ」


「んっ、あぁー」


 僕は水筒の水で喉を潤した後、水筒を置く。


「ん?なんだ、陽太。僕のことを見て」


「い、いや……なんでもないよ?」


 やけにこちらへと視線を送ってきた陽太のほうに告げた僕の言葉に彼女は視線をそらしながら軽く答える。

 何だろうか?その態度。

 でも、何でもないならいっか……そう思って彼女から視線を外した僕の服の袖を陽太が引っ張ってくる。


「……いや、あの、待って?」


「おん?」


 そちらのほうに視線を向ければ、そこには一つのチケットを握っている陽太の姿が。


「これ、あげるぅ……」


 そして、そのまま陽太は僕にその持っていたチケットをプレゼントしてくれる。


「おん?ありがと」


 僕にくれてチケット。

 それは水族館の割引チケットであった。

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