トイレ

 陽太と蓮夜の方でも色々あった。

 そして、学校の方でもいろいろな変化が多く訪れていた。


「……学校のトイレに生理用品があるの生々しいし、僕がトイレしていいのか不安になる」


 男子トイレの方で個室待ち行列が勃発している中、一人で小便器の方で用を足す僕は何とも言えない声を漏らす。


「ま、待っていろ!俺も今ちょっと立ちションして……」


「アホか、ズボン汚すぞ。大人しく個室行って来い」


「なぜだ!?」


「アホか、体の変化くらいは受け入れろや。射精できるのか、今のお前は」


「……くぅ」


 あっさりと用を足し終えた僕は蓮夜の方をおいて洗面台の方に向かっていく。


「……生理用品」


 そして、やっぱり注目してしまうのは大量に置かれている生理用品である。

 小便器の上のところにも置かれているし、個室にも置かれているし、洗面台にも置かれているし、何なら教室にまで置かれている。

 我が校が確実に今、一番生理用品が充実しているだろう。

 ちなみに生理がもたらしたら我が校の混乱は非常に大きかった。

 ほとんどの人間が阿鼻叫喚の地獄、体調不良者続出、トラウマ保持者、ボロボロと学校を休む人が頻発した。地獄である。

 蓮夜は世界を恨んでいた。

 陽太は『これが女子の苦しみ』と真っ青な顔で喜んでいた。ちょっとキモかった。流石に。

 普通に考えて女の子の方も生理を歓迎していないでしょ。


「……はぁー」


 僕はため息を漏らす。

 色々と学校が変わり、僕としてはなんとなくやりにくい。

 男子トイレも、更衣室も、全部が変わっていない。

 僕はこれ以上ないほどに複雑である……なんで僕がこんな目に合わなくてはならないのか。気にしていない周りも多いけど、僕は気にするんだよなぁ。

 気軽にパンツ見せてこようとするやつはいい加減にしろって話である。


「あっ、トイレもう終わったの?」


 トイレから教室の方に戻ってきた僕を陽太が出迎える。


「僕は一瞬だぞ。小便器は誰も使わないからな。みんなも列を開けてくれる」


「あぁ……そうか、僕たちはいつも行列何だけどね」


「大便器の数もそんなに多いわけじゃないからな。元々女子トイレなんてないのだし、混むのも仕方ねぇ」


「そうだねぇ……蓮夜はもう暫くの間、帰ってくることはないかな?」


「そうだろうな。小便器でするのは流石に止めさせたし。もうしばらくかかるだろう」


「……ははは、流石に小便器はねぇ」


「それで?次の授業はなんだっけ?」


「数学だね」


「……あぁ、あの元かつら加齢臭デブ、現在美容に誰よりも気を使う女子高生先生の授業か」


 僕は陽太と軽い雑談を繰り広げながら次の授業の準備をするのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る