三人

「そっか……お前はずっと女の子になりたかったのか」


「……そうなんだよね。僕はずっと心が女で、す、好きな人とかもずっと男の子だったんだよね」


「あぁ……うん、なるほどなぁ。そうか。言われてみれば納得だな」


「ふぇぇ!?わ、わかりやすかった、かな?」


「ちょっとだけだな。だが、気にするようなことじゃない」


「……そう。それなら良いんだけどぉ。それよりも僕の方はごめんね?」


「……は?」


「親御さんの方から女の子になるように望まれて、自分が着たくない格好を着させられて……そんな君の隣で僕はずっと浮かれちゃっていた……本当にごめんね?」


「いや……違うんだ、俺だってそうだ。お前のことを、知れてやれてなかった。むしろ、俺のほうが謝るべきだった。お前はずっとそうだったのだから。ようやく欲しかった自分になれて、それを祝福してあげられなかった俺の方こそ申し訳ねぇ」


 互いに互いの事情を共有した蓮夜と陽太は謝罪をし合う。


「いや、謝るようなことでもないか。友達として気付けなかったのは反省すべき点だが」


「……語らなかったのは自分たちだしね」

 

「あぁ、まったくだ……これからは、もっと知り合った状態で仲良くしような」


「ふふっ、そうだね」


 だが、そんな二人はすぐに謝罪を撤回して互いに笑い合う。


「真の意味で何もない僕は何も言えないンゴねぇ」


 そんな中で僕は何だ?

 自分の性愛対象は間違いなく女であり、性自認も男。

 蓮夜にだいぶ上から目線で子供は大人の道具で、子供のうちは我慢するしかないと話した僕の家族仲は普通に良好だ。

 そして、当然のようにTSもしてない。

 そんな僕は複雑そうな二人を前にちょっとついていけていなかった。

 まさか、僕の友達がこんなにも複雑で大変そうとは……部外者である僕まで何だが心がキューッとなるよね。


「いの一番に謝るべきなのは僕じゃないだろうか」

 

 体育前に生理現象を訴え、トイレで賢者となり、結局のところ体育に行かなかったという経験を持つ僕は今すぐに土下座するべき……いや、マジでするべきじゃないか?


「いやいや!?輪廻くんは良いんだよぉ。ぼ、僕を女の子として扱ってくれるだけで!そ、それだけで良いの!謝ることじゃないよ」


「そうだぜ!お前の励ましは結構聞いたのだからな!マジでかっこよかったし、俺は普通に救われたぞ!これからも俺の友達でいてくれよな!」


 そんなことを考える僕に対して、蓮夜と陽太の二人は謝る必要なんてないと必死に告げてくれるのだった。

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