第七話 新西蘭より
飛行機は徐々に高度を下ろしていく。
雲の層をどんどん突き抜け、やがて地上が見えてくる。
自然に囲まれたオークランド空港。
緑と青の景色の中、飛行機は脚を下ろした。
ニュージーランド。
今回の旅の舞台である。
一夜を過ごした飛行機から我々は降り、入管手続きを行う。
成田で出国したのと同じように、入国のゲートを通過した。
税関も規制された物品を何も持っていないので難なく突破した。
個々で検査を受け、空港の出口でクラスごとに再集合する。
と、なにやら輪が騒がしかい。騒ぎの中心は私の班のメンバーだった。
どうやらスマホ用の充電コードを空港のゴミ箱に捨てたとかなんとか。
税関のところで焦って捨ててしまった。
そんなことあるのか、と思いながら私は彼に自分の充電コードを貸した。
コードとコンセントを複数ずつ持ってきて正解だったなぁ、と感じた。
そんなこんなで、見上げたニュージーランドの空。
あいにく、その日の朝は雨が降っていたので美しいと言うのは難しかったが、まぁ、旅なんてものはそんなものである。
その国について最初の空くらいは美しい晴天を見て、清々しい気分で旅の安寧を静かに祝いたいものだが、中々そうはいかないものである。
雨は空港を出てからもしばらく止まなかった。
おまけに乗った観光バスのワイパーが動作不良を起こし、我々を載せたまま整備工場の戻ってしまった。日本では中々ない事例で、早々に異国を感じさせられたわけだが、珍しいことはウェルカムなのでまったく問題はなかった。
旅とは、そういうものであるべきなのだ。
自分の知らない世界を見る。常識や想定が通用しない。思う通りに物が運ばない。だからこそ旅には価値があって、楽しいのである。
空が雨であっても、バスが動作不良でも、我々は旅で出会うことに寛容な心で向き合うべきだし、そうするしかないのである。
雨に強く打ち付けられる窓ごしに、見慣れない景色――溢れるような緑と、土地に余裕のある街を見つめながら、私はしみじみとそう感じた。
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