第42話 幹部密会

 アルカナ幹部。団長、ゼロ・ラグラーより冠位グランドを与えられし者達。通常の団員を遥かに凌ぐ実力と潜在能力を兼ね備えている。


 全員が世界有数の実力者だ。



【魔術師】キルス。圧倒的な魔力量(団長の十分の一にも満たない)、最高峰の魔力操作を可能とする。ゼロが考案をした特級魔法を一つだけであるが模倣に成功した才女。


 現在ではラキルディス魔法学園の生徒として、ごく普通の一般人を演じている。




「わたくし、いずれ副団長を目指してますの」

「──ガチで? マジ向上心高過ぎマックス」




 キルスの隣に座っているのが【月】ロッテ。特徴的でギャルっぽい話し方をしている理由はゼロが仕込んだからである。


 制服を着ているのもゼロがあげている。理由などは特になく、彼女はエルフだったので更に尖ったキャラにしたいと軽く思ったからだ。



「んまぁ、あーし的にも副団長なれたら嬉しいけど……でも、レイナっちがいるしー」

「くっ、団長がなんだかんだ気に入ってますものね……わたくしの方が絶対に適してますのに!」

「何が違うのかね?」

「……魔力わたくしが上、頭脳わたくしが上、愛する気持ちわたくしが上、容姿引き分け……乳、わたくしの負け……」




 まさか、と言う衝撃の結論にキルスは辿り着いた。全てにおいて自身が上であるとわかった彼女、しかし、一つだけ負けている様子があるとすれば……それは



「あーしは団長の下で働けたら嬉しいから……このままでも」

「あなた、意外と欲がないんですのね。わたくしは天明界を潰し、神源教団を叩き、神をも滅ぼした後……団長と結婚する予定ですの!」

「……け、結婚! えぇぇ……だ、団長ならあーし……婚約指輪買っておこうかな、今のうちに。籍入れる用紙もあーしの方書いておいて。平和になった次の日くらいに一緒に出しに行きたい……かも」

「思ったより、欲深いんですのね、あなた」




 椅子に座りながらジュースで喉を潤し、キルスは青空を見上げている。空は青く澄んでいた。



「団長が居なければ今頃世界は暗雲に染まっていたのかもしれないですわね」

「まぁ、あーしもなんとかなったの団長のおかげだしね」

「えぇ、最近は神擬き、神の皮を被った眷属をも打破しているようですし」

「凄過ぎマックス。天明界もすごい意識してる」

「団長を無碍にできないでしょう。最強なんですから。しかし、その団長が集めている【芥川龍太郎】の書物が気になるところですが」




 キルスは覚えていた。団長、ゼロ・ラグラーが集めている【芥川龍太郎】の書物を。



「【究極奥義】の本もあるとか噂であるよ」

「そうですわね。そもそも芥川龍太郎が何者なのかわかりませんわ」

「歴史調べてるけど、見当たらない。唐突に出てきたとしか思えない。本当に一切の名前もなかった」

「おかしいですわね。いや、だからこそ団長はそれを恐れ書物を集めているのかもしれないのですが」

「団長が警戒する存在って、マジでやばいかもね。天明界も教団も団長には敵わないけど。その書物で勢力図が変わるかもしれない」





 芥川龍太郎ドラゴンたろう。全てが謎に進まれた存在(ゼロ君がノリで謎の詩人ごっこしたいと思って名乗っていた同人ペンネーム作家の名前)。



 全てにおいて超越をしている最強。ゼロ・ラグラーが恐る(厨二歴史なので恥ずかしい)と言う事実。



 微かに幹部の二人に冷や汗が流れる。だが、しかし、そこで二人は冷静に戻った。あの団長が負けるなどあろうはずがない。




「カカカッ、随分と無駄な心配をしておるのぉ。お主達」

「チャイカっち」

「【女帝】、心配はするのは当然では?」




 彼女達の前に現れたのは同じくアルカナ幹部、【女帝】チャイカ。を持っている長身の女吸血鬼。紫の瞳がロッテとキルスを見抜いた。



「妾は心配をしておらんよ。確かに妾の時代にも芥川などと言う詩人はおらんかったが……それでも団長は負けないじゃろうて」

「あぁ、貴方はアルカディアの血を与えられた【清廉一族】でしたわね。その後、封印をされた……200年ほど前に」

「うむ。その作家がもっと前、神話の時代3000年前であったとしても何も心配をしてはおらん」




 女帝は綺麗な銀髪をバサリとたなびかせている。



「ふむ、流石は年長者ですわね。精神的に安定してますわ。流石は年長者ですわね」

「おい、年長者を強調するでない。妾封印されてたから、実際の年齢はそこまでではない。お主らと同じじゃろうて」

「流石だね、おばさん」

「おい、ロッテ、殺すぞ」




 びきびき、びきびき、顔にイライラの青筋が浮かんでいく【女帝】チャイカ。彼女は過去200年前に封印をされ、ゼロによって現代に蘇った吸血鬼。だが、実年齢はそこまでではない。




「──おや、三人お揃いだったんですね」

「副団長……何のようです」

「おっす、レイなっち」

「お主か」



 【魔術師】キルス、【月】ロッテ、【女帝】チャイカ、三人の前に現れたのは【副団長】レイナ。


 ゼロのメイドも務める彼女がメイド服のまま姿を表す。




「相変わらず、チャイカ様は綺麗な銀髪をされてますね」

「ふん、当然じゃろうて。妾はアルカディア様の血を引き継いでいる清廉一族。アルカディア様も美しい銀色の髪を持っていたとされるからのぉ。その特徴を引き継いでいるんじゃ」

「ふふふ、私も銀髪なんです」

「あっそ」

「反応薄くないですか?」




 ほくそ笑み、存分に銀髪を見せつけるレイナ。心なしか、彼女の銀色の髪の方が輝いているように見えた。


 そして、それは以前よりも増していた。



 その変化にチャイカは気づいた。




「お主、なんかあったか? 随分と髪が綺麗になっているように見えるのじゃが」

「ふふふ、魔力も上がってます。はぁぁぁ」

「……なるほど、流石は副団長殿。更に強くなっていると言うわけかのぉ。まぁ、それくらいやってもらわなくては団長殿の隣は務まらんが」

「問題ありません。ゼロ様は私の働きに満足をしてくれていますし」

「ふん、団長殿は優しいからの、気を遣っているんじゃろうて」






(確かに、こやつの魔力が上がっておる……こんな短期間でどうやってこの量を増やした……?)

(なるほど、やりますわね。まぁ、わたくしの半分にも満たないですが……)

(レイナっち、やるじゃん)






 レイナから溢れる魔力に全員が内心で驚いていた。以前とは比べられないほどに増えていたからだ。


 ここへきての急激な伸びに微かな違和感を持つが、あの団長が補佐に置いているのだからこの程度は当然と全員が納得する。




「ふふ、この程度まだまだ発展途上ですよ」

「妾より弱いからの」

「わたくしより弱いですし」

「あーしの方が強いよ」

「……あの、人の気分を下げるようなことを言わないでください」

「本当のことじゃろうて」

「えぇ、そうですわね」

「まだまだだね」




 

 三人揃って正論を叩きつけてくるので一瞬、イラっとしたレイナ。意趣返しに何かを言ってやろうと画策する。




「まぁ、それを言ったら全員ゼロ様の黒鳥より弱いですけどね」

「おい、妾の気分を下げることを言うな」

「わたくし、それ気にしてましたの。団長のお役にもっと立ちたいのに、貢献したいのに、鳥より弱いだなんて」

「あーし、それ結構きつい。だんちょに手取り足取り教えてもらったのに鳥より弱いし」





 レイナに鳥より弱いと言われると全員が目線を下に下ろした。だが、再び目線を彼女達はあげる。



「ここからじゃ」

「わたくしも」

「あーしも」

「うんうん、素晴らしい信徒達ですね」




 四人で絆を深めているとそこに──




「団長殿!」

「団長!」

「だんちょー」

「ゼロ様」




 彼が現れる。最強、全ての根源、団長。ゼロ・ラグラー。



「うむ、四人共いつも助かっているよ。無理をし過ぎないように」

「「「はい!!」」」

「それでは私はお暇する」





 ゼロがさった後、四人はきゃーきゃー声をあげていた。



「やはり団長殿はイケイケじゃのぉ」

「わたくし、やっぱり好きですわ!」

「あーし、最近団長に推しって言う言葉教えてもらった。これが【推し】ってやつか」

「ゼロ様もてるんですね。まぁ、当然ですよね」






 そして、四人の元を去ったゼロ……





「さぁ、いくぞ兄弟! アルカディアの遺産を探しに!」

「お兄様、いくわよ」

「あ、えー」




 第三王女と妹に引っ張られ、アルカディアの伝説を調べようとしていた。

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