いつもと違う空

 外に出ると、分厚い雨雲が空を覆っていた。

 先程まで晴れていたのに……と思いながら、少し歩き始めてしまった道を戻ろうと、振り返る。

 その先にあるのは見慣れた景色のはずだ。

 私たちの家からそんなに離れてないはず。

 毎日、当たり前のように見ている近所の町並み。

 そのはずだった。


「ちょっと……ここ……どこ?」


 首だけを動かして、辺りを見回してみても、どこもかしこも見たこともない景色。

 今、自分は夢でも見ているのかと疑うほど、突然の出来事。

 私の目の前に広がっていたもの。

 それは鬱蒼うっそうとした木々に囲まれた大きな湖だった。

 無意識に後ずさった足が何かを踏み、バランスを崩した私は子供以来つかなかった尻餅をつく。

 身軽だった子供時代と違って、大人の体は重い。

 怪我を覚悟した私は反射的に目を瞑る。

 けれど、自身の体は柔らかい何かの上に腰を落としたようで痛みはない。

 ゆっくりと目を開き、首を下に下げる。

 自身の踏んでいるものを見た私は、驚きのあまり目が落ちそうなほど大きく見開き、弾かれるように前に飛び退いた。

 腰が抜けているのか、両手を地面につけたまま立ち上がれない。

 目の前に広がる湖が、風か何かの手によって波紋を作っている。

 腰が砕けて立てないまま、顔だけを後ろに向けて、もう一度地面に転がっているものを見た。

 私は思わず声が漏れる。


「なに……これ……。ここで……何があったの?」


 木々に囲まれた湖、その周りに転がっていたのは無数の人間だった。



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