第15話
俺は退魔師としてそこそこ仕事を任せられるようになった。時には雫さんと一緒に二人で仕事をしたり、師匠と仕事をしたり。簡単な死後となら、俺一人で出来るようになった。
大きく進歩したと、自分でそう思う。
師匠にも、良い結果を報告するようになって、とてもいい気持ちになる。
何より達成感が違った。
前まで、自信がないばかりでなく、俺の影に対してもおっかなびっくりなところがあったが、気がつけば退魔師として一人でも仕事を受けるようになる程までに成長した。
仕事が終わると師匠が「よくやった」と言って褒めてくれるし、たまにカフェで打ち上げをしたりしてくれる。もちろん、打ち上げ以外でもカフェに行く。それこそ毎日のように。
カフェでは情報収集をしたり、小原さんのような元退魔師に出会ったり、話を聞いたりしてそれなりに楽しく過ごしている。
そう。最近ではファッションに気をつけるようにもなった。目が見えるようになってから、ファッションというものをユウカさんが教えてくれた。貰った服を上手くコーディネートしてカフェに行くと、ユウカさんが凄く喜んでくれて、俺も嬉しいのだ。
そんな毎日を過ごしているある日の晩、師匠から一本の電話が入った。
「強君に任せたい仕事がある。詳しくはカフェで言うから、明日の午前十一時、開店の時間に待っているよ」
一方的にそう言われ、通話は切れた。一体何なんだろう。
影に「お前も、もしかしたら必要になるかもしれないから、心の準備をしっかりとしておけよ」
「わかった。了解」
そもそも影に心があるのかと、少し疑問にも思った。するとその思考を読み取ったのか、影は「影にも心ある。本能が強いから皆気づかないだけ」と言っていた。
なるほど、影にも心はあるのか。そうだよな。思考することも出来るから、心があってもおかしい話ではない。
「さあ、今日はもう寝よう」
お風呂にも入ったしあとは寝るだけだ。
俺は布団に入り込み、ゆっくりと瞼を閉じた。
変な夢を見た。これは夢だとわかる夢だ。
俺は師匠、雫さん、そして影と共に強大な力を持つ敵の影に立ち向かっていく。だが、敵の影はうんともすんとも言わない。攻撃するだけ無駄だと、そう思わされる。
ああ、俺達はこんなところで、終わってしまうのかと、絶望感がやって来ると俺の背後の影が敵の影に立ち向かっていく。
俺の影と敵の影は、お互い一歩も譲らず、ぶつかり合う。その戦いは人間には理解出来ない程の速さ、力で繰り広げられている。
俺の影は次第にぼろぼろと靄になる部分も増えていき、あっという間に一回り小さくなってしまった。
俺は「もういい!」と言って止めるのだが、俺の影は頑固なのかこう言って戦いを継続させた。
「友達、守る。当り前」
何も出来ず、ただ立っていることしか出来なかった。
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