[花ユメ] 藤宮紗希 編

1.生年月日は?

2004年5月31日


2.出身地は?

東京都


3.おいくつですか?

19です。


4.職業は?

執事として主様にお仕えしています。


5.血液型は?

おそらくB型かと。


6.身長は?

163cmです。


7.家族構成は?

共に生活しているのは主様とメイドの竜胆さんの三人です。主様と家族など、とても恐れ多いですが…。


8.学校は?

小学校に二年生までは通っていました。

その後は登校しておりません。


9.自分のチャームポイントは?

チャームポイント…このクロスタイでしょうか?

執事らしい装飾品で、とても気に入っております。


10.好きな食べ物は?

クリームシチューとアップルパイが好きです。


11.嫌いな食べ物は?

ブロッコリーとカリフラワーは苦手ですかね。

あの食感がどうも…。食べられないわけではないのですが。


12.趣味は?

主様に尽くすことが仕事であり趣味でもあります。

読書や音楽も好きですが、趣味と言えるのかどうか…。


13.今のマイブームは?

マイブームかどうかは分かりませんが、最近は入浴後に竜胆さんと髪を梳かし合うのが日課です。


14.集めているものはありますか?

ありませんね。お金はあまり使わないようにしています。

昔はぬいぐるみが好きで集めたかったのですが…今更集めるにしては、あまりに幼稚ですので。


15.口癖はありますか?

ないかと思いますね。私にもあるものなのでしょうか?


16.特技はなんですか?

体術です。特に蹴りは得意ですね。

それ以外?そうですね…あ、あやとり…など…。

子供の頃の唯一の遊びだったんです。


17.自分の長所は?

何事も中途半端にはしません。やるからには完璧にこなしますし、主様の予定もしっかりと整理しております。そういうところ…でしょうか?

長所というよりは、執事として当然のことですね。


18.自分の短所は?

一般的な家事を全う出来ないところです。

お恥ずかしいですが、料理が苦手なのでそこは竜胆さんにお任せしています。


19.昔と今の自分を比べて変わったところは?

自立できたかと思います。

昔は竜胆さん頼りでしたが、今は自分の力で守りたい人が増えましたので。


20.皆になんて呼ばれていますか?

藤宮さん、藤宮、紗希クン、紗希さん

ですかね。


21.よく行く場所は?

主様がいるところに行きますので、自分からどこかに行くことはありませんね。

ですが買い物に行った際にアクセサリーショップに気を惹かれてつい見てしまうことは…少し。


22.朝起きてすることは?

洗顔です。


23.夜寝る前にすることは?

ストレッチです。


24.今欲しいものは?

ハンガーが変形してしまったので新しく買いたいと思っています。後は新しいテーブルクロスと…

…?そういうことではなく?…個人的な欲しいものですか。そうですね………。竜胆さんのリボンは、可愛らしいと思ったことがあります。色違いがあったら…なんて…。


25.今後やってみたいことは?

主様と竜胆さんと三人で外食に行ってみたいです。

普段は外食などいたしませんので少し憧れがあります。難しい願いですけれど。


26.未来に行けたら何をしたい?

主様の健康と現状の確認です。


27.過去に行けたら何をしたい?

仕え始めの頃の自分に料理の練習をしておけと言い聞かせたい限りです。


28.もしも自分がもう一人いたら?

二人で自分の改善点をあげて自己磨きをします。


29.自分を動物に例えると?

動物ですか…。犬、ですかね。

犬は忠義や忠誠心の象徴とも言いますし、私の主様への想いと一致するかと。


30.一日動物になれるとしたら?

ドーベルマンになりたいです。


31.一つ願い事が叶うとしたら?

主様と竜胆さんの永遠の平和と幸福です。

大切な人には幸せになっていただきたいですから。


32.幸せだと思う瞬間は?

主様と竜胆さんと三人で、くだらないことに笑えているときです。


33.無人島に持って行くとしたら?

ナイフです。

食料の確保や身の安全は何よりも優先ですから。


34.男性になったら何をしたい?

主様をお守りします。女の身体は何かと弱いですから、不便な場面も多いので。


35.成人したらお酒を飲みたいと思いますか?

飲んではみたいです。


36.絵は上手いですか?

自分では満足していても相手に伝わらないことがほとんどですね…。一体何が悪いのか…。


37.好きな人のタイプは?

…常に明るく振る舞い、周りも明るくさせてくださる方は…すごいなと…思い、ます…。


38.好きな人の髪型は?

……。こだわりはありませんけど…。


39.あなたの恋の必勝法は?

あ、ありませんよ…!!!なんですかその質問は!!


40.何フェチですか?

フェチ?なんですかそれ…。


41.好きな人とデートで行くなら?

私は召使いですっ!デートに行くなど致しません!!


………っ…多くなど望みません。喫茶店などでゆっくりと過ごせたら…それだけで…。


42.好きな人と旅行に行くとしたら?

美しい景色のところならどこでも嬉しいです。

その景色に佇む主様と竜胆さんは…見たいなと…。

………というかこれは好きな人とかではなく!誰とでも行きたいものでしょうっ…!


43.好きな人に作ってもらいたい料理は?

なんだって作っていただけたら嬉しいですよっ…!!


……。ク、クリーム…シチュー……を…また…て、いえなんでもありませんっ!!!!


44.一目惚れはしますか?

しません!


45.人を見るとき、ついどこを見てしまう?

…服装です。服装にはその人の習慣がよく表れるものですから。


46.結婚したらどこに住みたい?

…結婚など、自分とは関係のない話です。

住み続けるならば生涯この屋敷がいいと思ってしまいますが…執事として傲慢ですね。


47.自分の人生を変えたと思う人は?

主様と竜胆さんです。主様のおかげで今私は生きておりますし、昔竜胆さんが私を家から連れ出してくれなければ、主様と出会うこともなかったでしょうから。


48.その人との思い出は?

主様との思い出…。やはり拾っていただいたときのことでしょうか。拾われた夜に食べさせてくださったクリームシチューの味がずっと忘れられないのです。

竜胆さんは…家にいた私を迎えに来てくれたときです。竜胆さんも私もぼろぼろで、背後から降りかかる罵声に追いつかれないように、必死で逃げていたことは今でも鮮明に覚えています。


49.許せない人はいますか?

昔の自分です。


50.木五倍子美晴さんのことをどう思いますか?

とても元気で周りも笑わせてくださる素敵な方だと思います。未来から来られたと聞いて、とても驚いたと同時に、八十年後でもまだ学制は変わっていないのだと思いましたね。

…木五倍子様が未来から助けに来てくださったということはつまり、本来の歴史では私たちは主様をお守りできなかったということです。大切な主様をお守りできなかったことは、一生の悔いとなるでしょう。…もっと精進しなければと思います。


51.葵傑さんのことをどう思いますか?

私にとって、主様は人生を救ってくれた神様のような、奇跡のような存在です。あの人柄は他者を寄せ付ける魅力があるのに、あの方は誰のことも特別扱いはせず、誰にも振り向きません。それなのに人を愛している、博愛という言葉を背負ったようなお方です。力強く輝いて、眩しくて、追いつくことも精一杯なほどなのに、どこか儚くて…私たちのことを置いて、消えてしまいそうな気がしてならないのです。だから私は主様を見失うことがないように、主様が私たちと違う道を歩もうとした時に手を取れるように、普段からお傍にお仕えしていたいのです。私はこれからも絶対に主様から離れずにその身をお守りする所存です。


52.竜胆ほのかさんのことをどう思いますか?

竜胆さんはかけがえのない人です。主様にお仕えする際、召使い同士がお互いに情をかけ、馴れ合わないように姓を違えると決めたのは私です。

ですがいくら他人のように振る舞っていても、竜胆さんから向けられる優しさや思いは以前と変わらないままでした。同業の仲間としても、姉としても、私のことを気にしてくださっているなと常に実感しております。ですがもう、私も子供ではありませんし、心配されずとも昔ほど弱くありません。今まで守られて来た分、今後は私が竜胆さんを守ります。


53.もあてゃさんのことをどう思いますか?

熱烈な方だと思います。彼女が主様を困らせていることに、出会った当初は焦っておりましたが今はそれもまた、日常の一部として見ております。

もあ様は処刑の際に駆けつけてくださったり、主様のために泣いてくださったり、情が深い方だと思いました。彼女が夜に活動されているのは恐らく、程度の差はあれど私たちと同じように家庭の問題が関係しているのではないかと思います。自分一人で生きていく術を考えて行動されているのは見習うべきですね。


54.片栗舞宙さんのことをどう思いますか?

魔法族の方だと伺っております。現代にもまだ魔法族の方がいたとはとても驚きましたね。

片栗様は長い時を生きていらっしゃいますが、普段の人柄を見ているととてもそうは見えないなと思います。親しみやすくてありがたいなと。

主様ととても仲が良さそうなので見ていてこちらも楽しいですし、有事の際は駆けつけて主様を説得してくださる頼もしい方です。

一度片栗様の使う魔法を見てみたかったですね。


55.一緒にお酒を飲むとしたら?

木五倍子様とは飲んでみたい物ですね。木五倍子様となら楽しめるかと。


56.一緒に旅行に行くとしたら?

竜胆さんと共に行けたならば、事前に調べてサポートし、楽しんでもらいたいと思います。


57.ライバルにしたくないのは?

片栗様ですかね。あの方は主様と肩を並べられるでしょう。私のやりたいことを、あの方は軽々とできてしまいそうですので…。もちろん、普段からそのような目線では見ていませんけれど。


58.一日この中の誰かになれるとしたら?

……もあ様、でしょうか?その…服が可愛らしいなと、思っていまして…。


59.怒らせると怖い人は?

木五倍子様は油断できないかと思いますね。普段そのような側面を見せない方は油断禁物と聞きます。


60.誰が一番運動神経がいいと思いますか?

主様です。苦手そうな競技を見たことがありませんので。


61.この人にこれだけは言いたい!ということは?

主様、髪を濡らしたままにしないでください。風邪を引かれでもしたら大変です。


62.好きな季節は?

秋が好きです。中秋の名月とも言うように、月が一層美しく見えますので。


63.生まれ変わるなら何になりたい?

猫がいいなと。


64.10年後の自分はどうなっている?

変わらず主様にお仕えしているでしょう。それまでには料理を振る舞うこともできていて欲しいです。


65.待ち合わせに相手が遅れたらどれほど待てる?

連絡があれば三十分程度ならお待ちします。それ以上は待てません。


66.一人の時間は何をして過ごす?

読書と服の手入れです。


67.一度始めたらやめられないことは?

掃除です。中断してしまうとどこをやり残していたか曖昧になってしまいますので。


68.感情がすぐ顔に出る方ですか?

出てしまっているかと思います。執事としてもっと精進しなければなりませんね…。


69.最近読んだ本は?

外国の文学作品です。


70.整理整頓は得意?

得意です。執事たるもの、清潔で整った部屋でなければ示しがつきませんから。


71.お祭りなど賑やかな場所は好きですか?

好きです。あのような雰囲気は見ているこちらまで楽しく感じますから。


72.今とは違う職業に就くとしたら?

私には主様の執事以外考えられません。ただ、前に主様と竜胆さんと訪れた水族館で見たイルカショーは素敵だと…少しやってみたいと思いました。


73.毎日の楽しみにしていることは?

入浴剤の香りを何にするか…ということです。


74.山と海、行くとしたら?

海が好きです。昔、三人で一色海岸という場所に訪れた際、入りはしませんでしたが波打ち際で足を濡らすのは楽しいと思った記憶があります。


75.言われて嬉しい言葉は?

主様が褒められたら私はとても嬉しいですね。

私自身は…お恥ずかしい話ですが、昔から、頑張ったね、という言葉に弱いかもしれません。


76.理想的な休日の過ごし方は?

なんの予定も今後のことも気にせずに、屋敷の庭の花に囲まれながら三人でゆっくりとお話しをしていたいです。


77.恋をしたらどうなる?

何かできることはないか、と探したり…する…のでは…。


78.世話を焼くのと焼かれるのはどっちがいい?

焼くのがいいです。…焼かれると私もまだまだ未熟なのだと思ってしまいます。


79.占いを信じますか?

占いなどに惑わされません、と言いたいのですが…何かと内容を気にしてしまう節があります。


80.突然ですが今何を考えてますか?

主様はどのように答えられているのかと考えておりました。


81.朝型か夜型、どちらですか?

強いていうならば夜型です。夜は屋敷の見回りがあるので起きていますし、その後も竜胆さんと交代で番をしていますので。ですが朝も早く起床して身なりを整えますので、正直朝型とも夜型とも…。


82.暑いのと寒いのどちらがいい?

寒い方が慣れています。体調管理は徹底しているのですが、昔から暑いと体調を崩すことが多くて…。


83.犬派と猫派どちらですか?

犬が好きです。猫には引っ掻かれた記憶がありまして…。


84.昔の自分に言いたいことは?

貴女の人生は決して悪い物じゃないよ、と。


85.葵傑さんと竜胆ほのかさんを守るためなら犠牲を出せますか?

……幸せを奪われる苦しみを、私は知っています。犠牲を出すというのは、恐らく相手の幸せを奪うことと同義でしょう。

私は…ためらってしまうかもしれません。

それでも、お二人の命に関わるならば…。みっともない姿を晒すでしょうが、やってみせる所存です。


86.葵傑さんと木五倍子美晴さんの交流に対して思うことはありますか?

ありがたいと思います。主様が他者に対してあれほど生き生きとされているのは久しぶりに見ました。

主様にとっても、私たちにとっても、木五倍子様との交流はなくてはならないものだったと思います。


87.最後に泣いたのはいつですか?

…主様が処刑場に向かわれる際に、同行を断られた時です。

あれほど強く言い聞かせられたのはいつぶりだったか…。大切な人を失うことも、また身寄りをなくすことも嫌だというのはあの方も知っているはずなのに。


88.竜胆ほのかさんの声が戻るなら戻したいですか?

もちろんです。竜胆さんの声が出なくなったのは私のせいですから。

責任は私が取らなければなりませんし、取るつもりでいます。

もしも本当に声が戻るなら、なんとしてでも絶対に戻してみせる所存です。


89.もあてゃさんの葵傑さんへのアプローチについてどう思いますか?

ただただ尊敬いたします。あれほどまでに大きな愛を素直に誰かに向けることができるのは簡単なことではないと思いますし、それが主様なわけですから、私たちの主様はこんなにも人に好かれているんだと誇りに思います。


90.葵傑さんともあてゃさんが結婚するとしたら幸せになってほしいですか?

もちろんです。主様がもあ様を選ばれたのなら、そこに私が口を挟むことはありません。私たちの命の危機に駆けつけてくださいましたし、何より主様へ日々愛を伝えていらっしゃるもあ様ならば、決して主様を悲しませるようなことはないと思いますので。


91.普段からどのような思いで葵傑さんを見ていますか?

主様はとても尊敬できる方です。常に先を歩くあの方の後ろに追いつきたいと思ってお仕えしています。それ以上は何もありません。


92.葵傑さんに自分の想いを伝えるチャンスがあったら?

主様との時間に、チャンスなどという邪な気持ちは持ち込みません。

この想いは、私の肉体が消える時まで胸にしまっておくべき物ですので。


93.葵傑さんの一番世話が焼けるところは?

誰彼構わず話しかけに行かれるところです。

今の世の中ではキゾクはよく思われませんから…少し不安です。

後は…有事の際、私たち召使いを守ろうと前に出られるところです。

本来ならば逆の役目ですし、主様の命が脅かされることはあってはならないことなのに…そのようなところも私たちの愛する主様なのだと、少しだけ思ってしまいます。


94.もし1日、何も気にせず一人で過ごすことになったら何をしますか?

主様と竜胆さんと共にティータイムなど…こ、これでは普段と何も変わりませんね。


95.無人島に行くなら誰を連れて行く?

片栗様と共にいれば脱出も早くできそうな気がしてしまいます。

無論、頼ったり守られたりなど迷惑になることは致しませんが。


96.今日人生が終わるなら何をする?

変わらず、主様にお仕えします。そして主様の就寝後に、遠い場所に行きます。

主様に自分の死に様などお見せするわけにはいきませんので。


97.一番好きな花は?

桜はとても綺麗だと思います。

すぐに散ってしまうのもまた、美しさの一部なのでしょうね。


98.くすぐりは弱いですか?

う…膝や首などは効きませんよ…!


99.大切な人が亡くなったら後を追いますか?

分かりません。もし主様や竜胆さんが亡くなってしまったら…いや、こんな縁起の悪い話はやめましょう。


100.今、幸せですか?

はい、私にはこれ以上の幸せはないと実感しております。主様も竜胆さんもいる毎日はとても充実していますので。


100の問い部屋、脱出完了。
















































部屋から出た紗希は、昔を思い出しながら歩く。




全ては、両親の離婚から始まった不幸。


お母さんが出て行って、それに竜胆さんが…お姉ちゃんが、連れて行かれた。


私は、お母さんがいなくなって好き勝手し出したお父さんと暮らす毎日で、怒鳴られたり、蹴られたり、痛い思いをした記憶がある。



遠くに行ったお姉ちゃん。

お母さんの実家がどこかさえ私は知らなかったけど、きっと転校になるくらい、遠いところだったんだと思う。


私はずっとお姉ちゃんのことが気になってしょうがなくて、まだ在籍のままの学校のお姉ちゃんの教室に行っては、来ないかなと来るわけもない姉を待っていた。


半年経って、女の人を連れてきたお父さんはずっと彼女に夢中だった。だから私は奴隷のように扱われるようになった。


友達もいて、先生も優しい、楽しかった小学校は不登校になって、家で勉強する生活。

必死に教科書を読み込んで、ドリルを解いて、なんとかニ年生分の知識はつけた。


お父さんや女の人は蔑む目で私を見ていて、たまに買い物を頼まれたと思えばお酒ばかりだし、子供には買えないと断ればまた殴られる。



そんな生活が続いて、また時が経って、離婚から一年経ったとき。女の人が実は既婚者で、お父さんを不倫相手にしていたことが分かって、更にお父さんは荒れた。

前まではある程度、女の人との時間で晴らしていた鬱憤を全部私に回すようになって、暴力は過激になった。


痛くて、でも誰にも相談なんかできないし、お姉ちゃんのことだけを考えて気を紛らわせて、ご飯も食べずに必死に生きていた。


そんなある日、お父さんの入浴の隙を狙ったかのように家の小さい窓が叩かれた。


こっそり外を見てみれば、そこにはぼろぼろになった大好きなお姉ちゃんがいた。


『紗希、紗希』


『お姉ちゃん…?』



突然の再会。

それから始まった逃避行。


なんとか窓から出られたとき、お父さんに気づかれてこれ以上ないほどの罵声を浴びた。


それでもお姉ちゃんは私の手を取ってくれて、大丈夫だよ、と言ってくれた。


二人で親から逃げて、施設に拾われても上手くいかなくてまた逃げて、このままどうなるんだろうな、でもお姉ちゃんがいれば、と思っていた。




その矢先に、主様に出会った。


どうせまた上手く行かない。

どうせまた逃げ出すんだろう。


そう思っていたけれど決してそんなことはなくて、むしろ私たちの方が捨てられたくない、ここにいたいと思うようになった。


主様は、私たちにとって奇跡のようなお方だ。


家にいたときと変わらない、相手に従う立ち場。

それでも、お父さんのときとは全く持って相手に対する気持ちが違った。



主様になら、自ら仕えたいと思った。



このままこの人の元にいれば平和な、人として最低限の生活ができると私もお姉ちゃんも思ったし、

実際主様はそんな毎日を私たちにくださった。

けれど…


拾われて数日後、突然お姉ちゃんの声が出なくなった。



心因性失声症。



私のせいだった。

私を守るためのストレスのせい。



あの日から十年が経った。

お姉ちゃんの声は、未だに出ないまま。



「…竜胆さん」



絶対に、私が治す。


私が、誰かの幸せを奪う存在になってはいけない。




主様も、竜胆さんも。


たくさんの救いをくれた二人に、もう私も人にあげられるようになったんだ、と思ってほしい。





私はもう、守られる存在じゃない。




私の全てを使ってでも


「二人に、幸せを捧げてみせる」





紗希はそう、静かでたしかな決意を胸に、今日も生きていく。

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