冥層の王

 ダンジョン内に存在する魔物を階層一つずつ叩き潰しながら下へ下へと降りていき、とうとう僕は冥層の方に到達していた。


「……多分だけど」


 今だに地上の方ではダンジョンスタンピードが止まっていない。

 確実に魔物の供給源を断った東京のダンジョンは別として、未だに地方と世界各国のダンジョンではスタンピードが終わっていない。

 基本的にダンジョンスタンピードを終わらせる方法は一つだけであり、その方法はスタンピードを率いている主を倒すことであった。


「ダンジョンスタンピードの主ってば冥層の方だよな」


 基本的にダンジョンスタンピードの主は早々に地上へと出てきて冒険者に倒されるのが主となっている。

 だが、未だにダンジョンスタンピードを率いる主というのは出てきたりしていない。

 となると……そう、となるとだ。

 ダンジョンスタンピードの主誰やねん問題が出てくるのである。

 基本的にダンジョンスタンピードを率いる魔物は一つのダンジョンにつき一体。

 だが、未だに主の姿は世界中のどのダンジョンでも出現していない。

 

「冥層だけだよなぁ」


 今の僕は冥層がすべてのダンジョン共通という前提で動いている。

 この前提のもとで動くのであれば……多分、このダンジョンスタンピードの主は冥層にいる奴だと思うのである。


「みぃーつけた」


 さて、冥層には個人的に『王』と呼んでいる他と比べて頭一つ抜けて狂暴かつ強力な魔物が存在している。

 僕の狙いはそいつ。

 ダンジョンスタンピードの主となっているのはこの王の魔物だと思うのだ。


『おぉぉおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!』


 僕は笑みを浮かべながら自分の前で咆哮を上げる魔物を蹴り飛ばす。

 

『ガルルルル』

 

 僕の蹴りを受けた魔物は少しばかり後退して、こちらへとにらみつけてくる。


「王の魔物と戦うのは久しぶり」


 僕は明らかにヤバい赤いオーラを纏わせている巨大な魔物の前に降り立つ。

 そして、前世において自分を殺したドラゴンと同じ王の魔物を前に僕は警戒心を抱くのだった。

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