激闘

 多い。


「……ちょっ、その……うぅん」


 多い……多い……多い……いや、だから多いってぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええ!多いよっ!?マジでっ!

 ダンジョンスタンピードが起こる最中で乱入し、一切動こうとしない冒険者たちの代わりに慌ただしく動いている僕は内心で悲鳴を上げる。

 

「ふぇぇぇぇ」


 本当に魔物が多すぎる。

 僕が直接物理的に叩き潰しても、雷を落として焼き焦がしても、地割れを起こして魔物を全滅させても、竜巻を起こしてすべての魔物を巻き上げても。

 魔物の軍勢が途切れる気しなかった。


「まぁーじで、どうしようかなぁ……本当はさっさと周りの人たちには逃げていてほしいんだけど」


 ここまで魔物が多いとは思わなかった。

 これなら桃葉には家で待っていてもらえばよかった……わざわざ助けるべき相手を増やすんじゃなかった。

 僕は片手間に魔物を一人で殲滅しながら頭を悩ませる。


「言えないしなぁ」


 周りの冒険者が逃げてくれればかなり戦いやすくなる。

 自然を操るこの力はあまりにも過剰かつ圧倒的なのだ。

 ちょっと範囲が広い。

 うっかり周りを巻き込んでしまいそうだった。


「うぅ……邪魔やぁ」


 本当に邪魔。心底邪魔。

 どうしよう……どうしようかなぁ?

 

「ふぅー、せいっ!」


 だんだんとダンジョンから出てくる魔物の質も上がっている。

 いつしか上層どころか中層の魔物は出てこなくなり、下層の魔物ばかりで冥層の魔物も数多く出てきている。

 流石の僕もここまで大量の魔物を相手に戦ったことなんてない。

 うっかりミスで周りを巻き込んだり、うち漏らしたりなんかもしないとは言い切ることが難しくなってくる。


「……地道に頑張るしかないよねぇ」


 本来はみんなに避難を呼びかけるだけで済む話である。

 だが、それを僕は出来ないのだ。

 ならば一生懸命頑張るしかないだろう。


「早く終わってくれないかなぁ」


 僕はぐちぐち文句を言いながらもダンジョンの方から上がってくる大量の魔物を倒していくのだった。

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