本当の怪物

 絶望のダンジョンスタンピード。

 そこに舞い降りた一筋の光。

 それが確実に冥層の魔物を地面へとその身を倒させた。


「よっと」


 それから。

 河野粟生の元に一組の男女が下りてくる。


「じゃあ、ここで下ろすから……カメラと一緒に見ててね?自分の視点は録画しておくから、あとで編集して見やすくすればいいよね?」


「うん、それで大丈夫よ。それじゃあ……お願いね?」


 降りてきたのは絶賛配信中の咲良と桃葉であった。


「はーい。じゃあ、行ってくる」


 咲良は手早く会話をすますと、地面を勢いよく蹴って爆速。


「せいっやぁっ!」


 そして、引き起こされるのは現実かどうかを疑うような光景である。

 ライダーキックの形で冥層の魔物へと突撃した咲良の一発。

 それは確実に冥層の魔物に大きな衝撃を与えて体を大きく陥没させると共に、その巨大な体を浮かせて僅かにではあるけどその体を後ろへと後退させる。

 その様は山を蹴り一つで動かしたかのようであり、これが一人の人間が起こした者とは誰が見ても信じないだろう。


『コメント』

 ・すげぇぇぇぇぇぇぇぇええええええええええええええええええええええええええええええっ!!!

 ・うっそぉ。こんなことがリアルにあるの?

 ・マジで凄いんだなぁ。この人。リアルの化け物だったのか。

 ・えっ?蹴り一つで倒したの?

 ・もしかしてだけどダンジョンスタンピード攻略は簡単?

 ・うっそー、えっ?これはCGとかじゃなくてマジなん?


 流石、というほかない圧倒的な力でもって冥層の魔物をたった一発でノックアウトさせてみた咲良の神業を前にすれば、視聴者も沸き上がざるを得ない。


「ふんふんふーん」


 そのあとも、鼻歌交じりに咲良はダンジョンの方から湧き上がってくる魔物を叩き潰していく。

 そこに苦戦のくの字もなく、その悉くがワンパン。

 周りの冒険者が手を出すまでもなかった。

 

「これは、この圧倒的な力は……」


「お久しぶりです」


 そんな中、目の前の光景を見て呆然としている河野粟生へと桃葉は声をかけるのだった。

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