攻略組との接触

 インターネットでの連絡。

 それはスムーズにこちらと、日本政府のすり合わせをすることができた。

 前世じゃまともに会話出来ていなかったから、互いの齟齬が頻発していた、ような気がするのだ。

 

「ふふっ、良かった」


 今世ではしっかりと連絡を取り合えたその事実に満足する僕は頷いて満足げにする。


「最初の奇行はともかくとして、何の問題もなく終わって良かったね」


「……奇行」


 一生懸命頑張って書いた文章なんだけどなぁ。奇行扱いなのか。

 日本政府とのやり取りを終え、桃葉と二人で首相官邸から帰る道のりの途中で告げる彼女の言葉に僕はちょっとばかし肩を落とす。


「やぁ、ちょっといいかな?」


 そんなことを考えながら首相官邸の中を歩いていたところ、前の方からやってきていた攻略組の面々、そのトップに立つ男から急に声の方がかけられる。


「ミ゛っ!?」


 僕は予想だにしていなかった攻略組の面々を前に慌てながら、桃葉の後ろへと緊急退避する。


「……私たちに何のようでしょうか?この通り、咲良ちゃんはあまり人と向かいあうのが得意ではないので早々に用を済ませてくれると助かるのですが」


「……強い人は全員コミュ障である法則でもあるのか?」


「何ですか?」


「いや、何でもないよ。失礼。私たちはただ、自分たちを助けてくれたことに感謝の意を伝えたいだけだよ。ありがとう、とね。あまり長居するのはよろしくなさそうだし、この辺りで。些細な謝礼はすでに振り込んでいる。見ておいてくれ。それでは」


 攻略組の面々は僕の方へと頭を下げた後、そのまま何かをすることはなく立ち去っていく……おそらく、前世において僕が最も触れ合っている面々は間違えなく彼らである。

 自分の転生について、感づく可能性があるとすれば彼らだろう……まぁ、ないと思うけど。


「よし。それじゃあ、気を取り直して私たちの家の方に帰ろうか」


「あっ、はい」


 勝手に恐れて、勝手に沈んでいた僕にかけられた桃葉の言葉に頷き、再び歩みを再開するのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る