攻略組

 日本において冥層に入って探索できるだけの実力を持った一部の人間を攻略組と呼んでいる。

 

「……うわぁ」


 そして、そんな攻略組の面々が僕の前で右往左往していた。

 どうやら自分が倒したドラゴンに苦戦して悲鳴を上げたのは攻略組だったようだ……えっ?あの攻略組がこの階層で戸惑っていたの?割と冥層の中でも浅いくらいじゃない?

 このドラゴンはこの階層の中でも強い部類だったのか?僕じゃちょっとわからなかったが。

 後、プロ意識の塊のような連中から悲鳴が出てきたん?あれだけ大きな。


「……え、えっと」


 そんなことを考えている間に僕は攻略組の面々が立っている地上へと降りたってしまった。


「……ぁ」


 当然のことながら日本最強だった前世の僕は攻略組の面々と接触したことがある。

 まだ攻略組でも冥層に足を踏み入れていなかったときに僕は攻略組の面々を助けたことがあるのだ……それをきっかけとして僕の実力が日本政府に届き、ちょくちょく僕の方に依頼が飛んでくるようになったのだ。

 日本政府のおかげで僕はダンジョン暮らしから高層マンション暮らしで多くの贅沢が出来るような立場に変えさせたもらったので不満はないが……忘年会に誘ってくれなかったこと以外。


「すまない」


 僕が過去を振り返っている間に、一般層の間では日本最強と呼ばれる攻略組のリーダー的な立ち位置にある『勇者』の河野粟生が自分へと話しかけてくる。


「あわ、わぁくぁあくぁくぁかwhぅあおおあjdなl」


 いくら、過去に面識があると言っても忘年会には誘ってくれなかった中、まともに会話できるような状態にはならない。桃葉の領域には到底届かない……。

 ましてやこちらは絶賛TS中である。

 過去の自分について知られるのも非常にまずい状態にあるのだ。


「し、失礼しましゅぅぅぅぅぅうううううううううううううっ!」


 この場において僕ができたことなどただ逃げることだけであった。


「ま、待ってくれっ!!!」


 だが、そんな中においても河野粟生は僕を呼び止めて自分の肩を思いっきりつかんで逃走を阻止してきた。


「ひいやぁぁぁぁぁぁぁああああああああっ!?」


 成長したと思っていた。

 一度は桃葉の病欠時に悟ったが……それでもワンチャン?とか思っていたけど全然ダメだった。

 やっぱり僕はしっかりとコミュ障だったようだ。

 僕は河野粟生へと肩に触れられたことに対して、大きな悲鳴を上げながら体を溶かし、地面へと自分の体をしみこませていく結果となったのだった。

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