冥層配信

 桃葉と色々な動画を撮っている日々。

 そんな中で行った雑談配信。

 そこで告げた言葉を成し遂げるため、僕はしっかりと準備して冥層へとやってきていた。


「ということで、ここが冥層。基本的に下層と冥層。その違いは環境の激変と言っていいよ」


 ダンジョン。

 そこは基本的に狭くて暗い道が入り組むまさに地下の迷宮となっている。

 だが、それは下層までであり、冥層からはその様相はがらりと変貌する。


「壮観な景色でしょ?」


 冥層からの景色。

 それは見渡す限りの大自然となる。

 この階層は様々な植物が生い茂る色とりどりな大森林であった。


『コメント』

 ・すげぇー、これが冥層。

 ・ほ、本当に来たの……?死なないよね。

 ・やっべぇ……。

 ・本当にすごい、こんなのがダンジョンの中に。

 ・マジですごいな。

 

 コメント欄もこの自然を前にして満足してくれたようでよかった。


「……僕は旅行とかしたことなかったからね。でも、ここをくれば下手な世界旅行よりも、もっとすごい景色が見られて好きなんだ。小学生の時、同級生が周りに自慢していた海外旅行時の写真を超えられる自信があるよ、ここは。飯も上手いし」


 冥層の魔物の味は実に美味である。

 誰もが納得できる素晴らしい味をしていると思う……どうやら、僕以外の人間が魔物を食べるとお腹を壊してしまうらしいけど。


「さて、と……まぁ、この自然は置いておいて。話を先に進めていこうか」


 僕は一旦景色の話は終わらせる。


「次は魔物につい……来たね」


 わずかな地面の揺れを感じ取った僕はその場を跳躍。

 それと共に地面を突き破って巨大な土竜の怪物が顔を出してこちらの方へと腕を伸ばしてくる。


「きゅーいっ!」


 そんな腕をあらかじめ飛ぶことで対処していた僕の元へと今度は巨大な鳥の魔物が自分の方へと近づいてくる。


「よっと」


 それに対して僕は大きく開かれた鳥の嘴を掴んでそのまま有無を言わさず土竜が暴れている地面の方へとたたきつける。


「かーっ!?」


「ぐもーっ!?」


 地面には二人で団子状態になった土竜と鳥の魔物。


「せいやっ!」


 それらの方へと視線を送る僕は宙を蹴って急降下。

 その勢いがままに自分の手刀でもって鳥も、土竜もまとめて真っ二つにして葬り去ってやる。


「冥層の魔物って、魔物同士が連携して自分たちを追い詰めてくるから厄介なんだよね」


 鳥と土竜。

 その両者の魔物の返り血をたっぷり浴びてしまった僕はそれを振り払いながらカメラに向けて冥層における魔物の危険性を語っていくのだった。

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