踊り

 ダンスに自信がなく、どうしても乗り気になれない僕に対して。


「大丈夫だよ。君はちょっとおぼつかない程度の戦いぶりを見せるのが一番かわいいと思うから。私が言うのだから間違いないよ」

 

 桃葉は心配しなくてよいと声をかけてくれる。


「そ、そうなの……?」


 そんな桃葉の言葉に僕は首をかしげる。

 ダンスとかは普通、かっこよく踊ったり、可愛らしく踊ったりするのじゃないの?不格好な踊りに価値なんてあるの?

 

「そうだよ、本当に良いんだよ」


 だが、そんな僕の疑問に対して桃葉が払しょくする。


「と、いうことでっ!」

 

 そして、そのまま桃葉は僕へと抱き着いてくる。


「はふんっ!?」

 

 いきなりだったせいで、僕は思わず変な声を出してしまった。


「な、何っ!?」


「いや、抱き着きたくなっちゃって」


「あぁ、そう」


 桃葉にほっぺをすりすりされながら僕は彼女の言葉に頷く。


「それじゃあ、私たちで何を踊るか決めようっ!えっとね……今流行っている踊りがね。これとこれ、これかな?」


「ふむふむ」


 僕はほっぺをすりすりされながら桃葉が見せてくれるショート、と言われる動画形態に投稿されている踊りを見ていく。


「……うーん、このハート作るやつやらない?身長差とかもちょうどよいと思うけど」


「あー、良いわね」


 僕の言葉に桃葉がうなづく。


「それじゃあ、一緒にやろうか」


「そうだね……頑張るよ!」


 桃葉の言葉へと力強く頷き、僕は強い意欲を見せるのだった。


 ■■■■■


 ダンスは大変だった。

 というか、普通に僕が踊るの下手だった。

 だが、それでも桃葉は下手なままでいいからということで自分の下手の動画を投稿することになった。

 それでどうなったかというと……。


「本当に伸びている……」


 しっかりと伸びてくれた。

 結構な反響もあり、びっくりするくらいの再生回数をたたき出した。


「……ってーと」


 それで、この動画のコメント欄に書かれているコメントは『圧倒的な身体能力によって繰り出されるカクカクダンス』『なんでこんなにおもろい動きなの?』『なんか絶妙に動きがあれなんだよね。本当に謎』『俺が待っていたのはこれ。このきも可愛さよ』『なんか動きはきもいけど、それでもかわいい』『慣れない中で一生懸命踊っている感じマジで良い』などと言った感じであった。


「なんかちょっと釈然としないけどよしっ!」


 コメント欄にちょっとだけ釈然としないものを抱いたものの、それでもしっかりと伸びてくれた。

 それに僕は納得して頷くのだった。

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