ショート

「えぇ、そうよ」


 僕の疑問。

 それに元気よく桃葉は答える。


「ということで踊りましょ!」


 そして、そのまま元気よく桃葉は答える。


「……はい?」


 僕は桃葉の言葉に首をかしげる。

 まるで意味が分からなかった。


「ショートを撮るのよ」


 だが、そんな僕の前で桃葉は元気に答える……ショート?なんで急に英単語が出てきたの?


「えっ?もしかしてだけど……ショートのことがわかっていない?」


「うん。流石に英単語のことじゃないよね?」


「うん、違うね」


 僕の言葉を桃葉は笑顔で否定する。


「ごめん……普通に何か知らない」


「結構有名だと思うけど……えっとね、ショートってのは動画の種類よ、1分以内の短い動画のことを言うの。これの特徴はよく見られる代わりにあまりお金を稼げないことかしら」


「何それ!?今すぐにでもやろうよ!僕にピッタリじゃないか!」


 僕は桃葉の言葉に食いつく。


「別にお金なんていらないよ!見られさえすればもうそれだけで満足だよ!」


 自分としての思いはどこまで行ってもただ一つである。より多くの人に見てもらいたい。

 ただそれだけなのである。

 それを考えるとこのショートとか言うものはまさに僕のためのものなのではなかろうか?


「別に、桃葉の方もお金には困ってないよね?」


「まぁね。私は大企業の娘で、その後を継ぐための努力をしてきているし、それも認められている。社長になることもほとんど確定しているし、そもそもとして現状でもお金を使い切れないくらいあるからね。小学生の頃からやっていた株などのトレードも順調。日本企業の株を多く買っていた私としては日経平均の上昇も追い風だったわ」


 お、おぉ……株の話をしている。

 なんか凄そう。


「だから、私がやっている配信の理由さより多くの人を楽しませること……もちろん、私の名前と企業の名を売りたいというのもあるけどね」


「ふむふむ」


「そして、今は咲良ちゃんと楽しく活動出来れば十分よ」


「え、えへへ」


 いきなり随分と嬉しいことを言ってくれるじゃないか……うへへ、笑みも止まらないって奴ですよ。


「そ、それじゃあ……一緒に頑張ろうね?」


「うん。もちろん。一緒に頑張ろうね……ということでショートのために踊ろうか。一分くらいの簡単に踊れるやつ」


「……踊る、だけか。えっ?これっぽちも踊れる気がしない」


 桃葉の言葉。

 それに対して僕は思わず何とも言えない反応をとってしまうのだった……僕、踊ったことなんて前世含めて一度もないのだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る