依存

「うわぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああんっ!」


 僕の悲痛な叫びが桃葉の家の中に響く。


「どうしたのぉ?」


 半泣きになっている僕を優しく抱きしめている桃葉へと僕は、僕は今日の学校での出来事を語っていく。


「……何も話せなかった」


 いや、語ろうとしたけど何も語れなかった。

 だって、何もできなかっただけなのだから。

 桃葉が朝、病気となったこの日。

 一人で学校に行った僕は周りの人とこれっぽちも話せなかった。

 成長したというのは完全なる僕の勘違いだった。


「……うぅ」


 あれなのだ。

 環奈さんや林檎さんとも話せなくてなってしまったのだ。

 桃葉がいたときには、ある程度話せていたのだ。


「うぅ……ずっと、ずっと桃葉に頼り切りで僕は全然成長していなかったぁ」


「……そっかぁ」


「それに……それに、クラスの女子が僕のことをちょっとウザいって陰口言っててぇ」


 まともに話すこともできないクソ陰キャ。

 周りからあぁだ、こうだ言われるであろうということは覚悟していたが、実際に面と面で向かってはっきり告げられるとやっぱりここに来るものがあってしまう。


「大変だったのだねぇ……」


「うぅ……自分が情けないよぉ」


 僕はしばらくの間。

 桃葉に抱き着きながら泣き言を漏らし続ける。

 そして、ようやく僕の泣き言が言い終わり、自分の中で悲しみへと折り合いがついてくる。


「……ところでもう風邪の方は治ったの?」


 冷静になってみて、そういえば桃葉ってば風邪だったことを思い出し、本来であれば一番最初に聞くべきだった彼女の体調の良し悪しを尋ねる。


「うん、それはもう大丈夫……明日から私も学校に行けるから。また二人で頑張ろうね?大丈夫だよ、私はずーっと咲良ちゃんを愛しているから」


「うえぇぇ……ありがとぉ」


 いつまでも頼りきりは不味い。

 それはわかっていながら、わかっていながらも僕は桃葉へと寄りかかってしまうのだった。


 ■■■■■


 自分が仮病で学校を休み、たった一人で咲良ちゃんを学校に行かせてこの日の夜。


「すぅ……すぅ……すぅ……」


 私は自分の隣で寝ている咲良ちゃんの方へと視線を送り、そっと自分の手を伸ばしてそのまま彼女の綺麗な髪をなでる。


「ごめんねぇ……咲良ちゃん。悲しませて……あぁ、でもさ。私ってばもう止められそうにないんだよねぇ」


 あぁ、なんてかわいいのだろうか。


「すぅ……すぅ……すぅ……」


「……んっ」


 私は我慢することができず、ゆっくりと自分の口を眠っている咲良ちゃんの口の方へと近づけていくのだった。

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