お勉強

 僕がコミュ障たる所以を話した後、少しばかりクラスメートたちが優しくなってくれたと思う。

 これが、同情というやつか……ふへへ、みんなが優しくなってうれしいばかりである。

 でも……ここで油断するわけにはいかない。

 いくら同情を寄せられていたとしても、それに胡坐をかいてしまえばいずれ愛想の方をつかれてしまうだろう。

 それだけは避けなければならない……っ!


「それじゃあ」


 そんなことを決意する僕の前に。

 

「勉強していこうか」


 まず立ちふさがるのはコミュ力とは関係ないお勉強であった。


「うぅ」


 学校から帰ってきた後、勉強をしようと言って教材を広げる桃葉を前にして僕はうめき声をあげる。


「ほら、しょぼくれない。しっかりと勉強もしていかないと。学生の本分なんだよ?」


「……で、でも僕は冒険者ですしぃ。勉強しなくとも多分将来に支障はぁ」


「でも、人とのコミュニケーションを取るうえで勉強も大切よ?」


「……っ!?」


「数学的思考力も、国語力も当たり前のように円滑なコミュニケーションの場には必須。誰もがわかるようなことをわからないやつと会話したい人はいないし、教養の深さは話せる内容の多さに直結するわ」


「……っ!?」


 僕は桃葉の言葉に雷へと当たったかのような衝撃を感じる。


「勉強というのはしておいて損はないわよ?古文漢文とか使わないものもあるかもだけど……それでも全体的に見ればやった方がいいわ。ということでやりましょ?」


「……う、うん。頑張るよ……っ!」


 コミュニケーションに必要である。

 それを言われて断ることなんてできない。


「それじゃあ、まず僕は何をすればいいかな?」


「そうね……それじゃあ、まず。小学生の範囲からやっていこうか。わかるかな?小学六年生の内容とか」


「ふ、ふふふひっ、確かに僕は小学五年生までしか学校に行っていない。だけど、そ、それでもここまで生きてきているんだよ?あ、あまり舐めないでほしいね。小学生がやる内容なんてわかって当然だよぉ!」


「本当?それなら頑張ってね?とりあえず小学生の範囲の問題集もってきたから。これを解いてもらえる?」


「ま、任せて!」


 桃葉の言葉に頷いた僕は彼女から渡された問題集をもくもくと解いていくのだった。


「……」

 

 ちなみに明らかにフラグっぽかった僕の言葉が回収することはなく、小学六年生の内容であればある程度わかったし、わからなくとも桃葉に少し教えてもらえばできるようになるばかりだった。

 さすがに小学生の分野は楽勝ですわ!」

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