授業

 前途多難な気がしつつも、優しいクラスメートたちのおかげでなんとかなりそうな僕の学校生活。

 それにちょっとだけワクワクしつつも期待していた僕の心打ちは。


「……?」


 早速崩壊されられていた。

 

「えー、ここはxに代入し、その後に……」


 僕が受けることとなった初めての授業。

 それは数学の授業であった。

 その授業を前にする僕の頭の中には宇宙が広がり、目の前の光景を何も理解することはできなかった。


「……かん、すう?」


 僕にできるのは四則の計算に分数少数の計算くらいなものである。

 式に絶対出てきちゃいけないであろうアルファベットが当たり前のようにあるのは一体どういうことだろうか?

 何もわからない。

 教科書を見てみても何がなんだが……僕の知らないものがいっぱいある。

 ちょっと小学生の知識では太刀打ちできない。

 結局のところ僕は初回の授業をただ首を傾げただけで終わった。


「……漢字が読めない」


 数学以外も終わっていた。

 そもそもとして漢字が読めないのである。もうどうしようもない。

 教科書も、先生が黒板に書く内容も読めない。


「……」


 もうどうしろと言うのだろうか?

 というか、数学って何?算数は?

 日本史、世界史……社会は?生物、化学、物理……いや、だから理科は?なんで急に科目名が変わっているの?なんでちょっとおしゃれなものになっているの?

 あれなのかな……?国全体がそういう時期ってこと?

 小学校を途中から行かなくなり、中学校に一回も行ったことのない僕を置いていかないでほしい。

 

「うぅ……終わった」


 朝から時が進み。

 お昼の時間となったところで僕は力なく机へと倒れることしかできなかった。


「……大丈夫?」


 そんな僕のもとに心配そうな桃葉が近づいてくる。


「全然大丈夫じゃない。もう授業の何もかもがわからない……僕にはきれいにノートをとるので精一杯だった」


 僕は桃葉の言葉に答えると共に自分のノートを見せる。

 もう完ぺきに書いてあることを模写することしか僕にはできなかった。

 

「本当にノート綺麗ね。ここまで丁寧にノートをとってわからなかったの?」


「……い、いじわる?小学校までにしか通っていない僕にはぁ、もう何を言っているのかわからず」


「ほ、本当に小学生までなの?」


「そう言っているじゃん」


「……ちょっとにわかには信じがたくて、自分の中であまり呑み込めていなかったかも、ごめんね?えっと……それじゃあ、今日から家へと帰ったら一緒に勉強しようか」


「……!ほんと?ありがとう!」


「……っ」


 僕は桃葉の言葉に笑顔でお礼を口にするのだった。

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