同級生
ずいぶんと珍しい転入生として高校の方にやってきた僕は多くの生徒たちに囲まれていた。
「ねぇねぇ!配信見たよ。本当にすごかったね!」
「なんでそんなに強くなったの?ちょっと私もダンジョンの方に興味があるのだよね!」
「いやぁー、かっこよかったなぁ。配信に出ていた咲良ちゃん!」
「それなのに可愛いとかもう最強じゃん!顔ちっちゃ!」
「というか髪も、肌も綺麗だよね?何か特別なケアとかしてたりするの?」
「ほんと、すっごい綺麗な髪。ちょっと触ってみてもいい?どれだけサラサラなのか……」
「あわわわわ」
自分を囲んでいるほとんどの生徒は女の子である。
たくさんの女の子に囲まれているというだけで緊張してしまうというのに、それに加えて大量の言葉が自分の方に投げかけられているという状況を前に僕は困惑と共に瞳を回していた。
「やあ、君たち。いい加減やめてあげな?結構困惑しちゃっているから、彼」
そんな中で、まるで救世主かのように同じクラスとなっている桃葉が近づいてくる。
「も、桃葉ぁ!」
自分の四方を囲まれてしまっている状態。
そこからサクッと抜けた僕は彼女の背後へと逃げていく。
「あっ、ごめん。いきなり話しかけすぎちゃったね?」
そんな僕を前にして、自分を囲っていた同級生の一人が声を上げる。
あ、あわわ!?学校初日にして僕は周りから呆れられてしまっているぅ!?ま、不味いのないだろうか!?このままだと虐められてしまう。
訳もなく殴られてしまう……煙草の火を押し付けられたり、ビンで殴られたり。
こ、困るぅ!
「す、す、す、す、すみませぇん。自分はあまり人と話すのが得意ではなくぅ!」
僕は桃葉の背中に顔を隠した状態で謝罪の言葉を口にする。
「そうなんだ、それじゃあごめんね?こちらが一気に色々と話しかけちゃって。負担になっちゃったかな?」
「ふ、負担というわけではぁ」
「大丈夫だよぉ?」
「はふぅん」
困惑のままに言葉を話していた僕の頭を急に桃葉が撫でてきて、僕は思わず変な声をあげてしまう。
「大丈夫だからね?そんな負担に感じることもなくのびのびと一緒に学校生活を楽しもうね」
「はひっ」
優しく告げられる桃葉の言葉に僕は頷く。
「うん、私たちの方もよろしくね?」
「いやぁ……急に話しかけすぎましたなぁ」
「まずは私たちの名前を憶えてもらうとこからだよね」
そして、それに続く形でほかのクラスメートたちも次々と僕の方に話しかけてくれる。
いじめられなそう……どうやらここにいる人たちは優しい人たちのようだ。
「あ、ありがとうございます」
僕はそんなみんなに向かって感謝の言葉を口にするのだった。
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