「うぅ……大変だった」


 昨日は散々だった。

 長い長い髪をはじめとする洗浄に、多くの肌のスキンケア。

 色々なものに多くの時間がひたすらかかってしまった。

 何よりも、女の子と二人でお風呂に入っている事実が自分の中でかなり、かなり重かった。

 一晩経った今でも疲労感が残っている……これを毎日なんて信じられない。

 これからは最低でも一人でお風呂に入れてもらえるように頼もう。

 罪悪感ともひどい……ひどい、結構大きかったな。


「……っ!」

 

 な、なにを考えているのだ!僕は。

 心頭滅却!心頭滅却すれば火もまた涼し!!!

 さぁ、落ち着くのだぁぁぁぁぁぁ!僕よぉ!?

 

「あっ、咲良ちゃん起きてきたのね」


「えっ、あっ、そうです。おはようございます」


「えぇ、おはよう。それじゃあ、早速で悪いのだけど……ちょっとそこに座ってくれない?咲良ちゃんと話したいことがあって」


 そんなことを考える僕が客室の方よりリビングへと入ってきたその瞬間。

 リビングの方で待っていた桃葉が自分の方へと声をかけてくる。


「あっ、はい」


 僕は素直に桃葉の言葉へと頷いてリビングの椅子へと腰を下ろす。


「前に私が話したことを覚えているかしら?」


「……前?」


 僕は桃葉の言葉に首をかしげる。

 前に、そんな大事をされただろうか?


「私の祖父は私立の高校の運営者なの。それで、私も今祖父が経営している高校のほうに通っているのだけどね?」


「はい」


「ようやく準備が終わったわ」


「……準備?」


「ほ、本当に忘れちゃったの?私は言ったじゃない。貴方には高校の方にも通ってもらうって」


「……んっ?」


「ようやく準備ができたわ。私の祖父が運営している高校のほうに咲良ちゃんが通えるようになったわ。早速だけど、もう明日から高校のほうに通ってもらうことになる予定よ」


「……んっ?」


 僕は桃葉の言葉に首をかしげる。

 何を、言っているのだろうか?

 今、僕は何を言われているのだろうか?まるでわからない。

 わかりたくもない。


「あら?聞こえなかったかしら?」


「……」


 いや……いや、いや。


「もう明日から咲良ちゃんには高校のほうに通ってもらうわ。理事長は私の祖父だから何の心配もいらないよ。私と一緒に、楽しい学校生活にしようね?」


 聞こえてなかったわけじゃない。

 ただ、認めたくなかっただけである。


「む、無理ですぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううううううううううっ!!!」


 二回も言われてしまった僕は、ストレートに無理であると全力で表現しながら悲鳴を上げるのだった。

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