お邪魔
初めてのコラボ配信。
それは概ね成功、だったと思う。
「今日はありがとうね!配信の方は大成功だったよ」
「う、うん……こちらこそ、楽しかったよ」
僕は桃葉の言葉に頷くと共に不器用な笑みを浮かべてみせる。
「じゃあ、またね!」
「う、うん!そ、それじゃあ……自分はこれで。ま、またよろしくお願いしましゅ……っ」
噛んだ。
最後の最後で噛んでしまった僕は気恥ずかしさから慌ててダンジョンの中に戻っていこうとする。
「待って」
「はひっ!?」
だが、そんな僕は急に後ろから桃葉に肩を掴まれて強引に止められる。
「な、何でしょう……?」
「どこに行くつもりなの?」
「だ、ダンジョンの中にですけどぉ」
「なんで?」
「な、なんでっ!?え、えっと……」
僕は桃葉の言葉に少しばかり気圧されながらも答えていく。
「寝床を、確保するためですけどぉ?へ、へへ……実は家がなくてですね」
「……だから、ダンジョンで寝泊まりを?」
「そう」
家がないのだから仕方ない。
ダンジョンには雨が降ってこないので完ぺきなのである。
強い魔物の死骸の中にいれば他の魔物もビビッて手を出せなくなるし。
「……き、危険すぎるよ!」
「はえ?」
そんな完ぺきな僕の言葉に対して、桃葉は実に力強い言葉で危険であると断言してくる。
「ほ、ほら!私の家に来てみるのはどうかな?私の家は今、親もいないし気軽に来られると思うけどどうかな?流石にそのままダンジョンにぽいっはできないよ!命の恩人をそんな目に合わせるのは私のプライドが許さないっ!」
「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?」
家に来ていいよ。
そう告げる桃葉の言葉に僕は動揺の声を上げるのだった。
■■■■■
罪悪感。
僕は本当のところを言えば、男の子である。
「お、お邪魔しますぅ……」
それなのに、おそらくは僕のことを女の子のことだと思って家に上げてくれたに違いない桃葉を前に、僕は罪悪感を感じながら彼女の家に上がらせてもらっていた。
結局、僕は桃葉の家に来なよ、という申し出を断ることができなかったのである。
「さぁ、好きなところに座って頂戴。私の家だから……実は一人暮らしでね。私以外で気にする人はいないから安心してくつろいでね。私は咲良ちゃんが相手なら大体とのことを許せるから」
「……う、うにゅぅ」
お、女の子の匂いがするぅぅぅぅぅぅぅ。
悪いことをしている。
性別を騙して女の子の部屋に入っているのだから……でも、それでも自分の鼻孔をくすぐる桃葉の言葉に僕は背徳的で、ほの暗い情欲を覚えてしまうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます