コラボ

 冷静に考えてみると僕はかなり悲惨な人生を歩んでいると我ながら思う。

 というより、転生しなければ悲惨なまま終わってしまっていた。

 親からはネグレクトを受け、生きるためにダンジョンへと潜って命がけの戦いを繰り広げ、殺した魔物の体を貪り食らう。

 その果てに圧倒的な力を手にしても、それを活かして何かをする機会はついぞ訪れなかった。

 永遠にダンジョンを潜り続けただけの人生だった。

 配信は一度も日の目を浴びることなく、たまに政府よりお願いされる程度。

 その政府からも腫れ物扱いされているのか、なにかのイベント事に招待されることもなかった。

 誰にも望まれずして生まれ、誰とも仲良くこともなく、最後は名も知らぬ誰かにそのすべてが『嘘』であると叩きつけられ、そのまま死んだ。

 

「ふへへへ。でも、今があるから良いのぉ」


 それでも、運良く僕は転生して新しい生を受けることができた。

 これだけで十分である。


「僕は、誰かにずっと見てもらいたかった。ずっと、誰かに自分のことを認めてほしかった。それが、出来たのはも、も、桃葉のぉ、おかげだから。本当に、謝らなくて良いんだよ?僕はずっと感謝しているのだから」


 すべてが僕の本音である。

 だからこそ、『無神経に人の傷に触れてごめんね』と告げる桃葉へと謝らなくていいと告げる。


「……そう?」


「うん、そうなの……ほ、本当に感謝してて、自分が配信で注目を浴びられるようになった一番の要因が桃葉なのでぇ」


 間違いなく桃葉がいなければ僕は今でも底辺配信者をやっていただろう。


「それなら、感謝すべきは私の方だよ。命を助けてもらっちゃったのだから。何か、してほしいことがあったら気兼ねなく言ってくれていいからね?」


「な、ならぁ……ぼ、僕と友達にぃ」

 

 桃葉の申し出。

 それに対して僕は自分の夢の一つとも言える友達くれないかどうかを尋ねる。


「そ、それくらいならいくらでも!というかもう私たちは友達だよ!」


「ほほぉう」

 

 友達……なんと甘美な響きだろうか。


「ふへへへ……友達ぃ。初めて出来たよぉ」


「さ、咲良ちゃぁん」


「はいはい、咲良だよぉ。でふへぇ」


「もぉー!私がずっと友達だから!」


「おふっ!?」


 僕はいきなり桃葉から抱きつかれ、思わず変な声を上げてしまう。

 な、なんかいい匂いがする……女の子、特有のいい匂いが!こ、こんな風に抱きつかれしまっても良いのですかぁ!?


「み、見られてたいんだよね!」


「は、はい!で、出来ればそのほかにも青春っぽいことしてみたいなぁっと」


「それじゃあ!私とコラボ配信しましょうよ!二人でコラボ配信!青春っぽいでしょう?一緒に配信すれば視聴者の方も増えると思うよ!」


「お、おぉ!そ、そんなことまでぇ!」


 僕は桃葉の言葉に歓喜の声をあげるのだった。

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