猫はいる箱

猫はいる箱

僕は今　箱の中にいる

当たり前だけど　箱の中に明かりは無い

いや、本当はあるんだけど

僕には関係無い事だ

だって丸見え

箱の隅にいくつか固い物と透明な物がふたつあって

固い物の片方には黄色い模様が

透明な物には両方とも水が入っている

だから喉が渇いて水が飲みたかったんだけど

なんか飲めなくなっちゃった

色々手を出してたら

あちこち動くものだからビックリしたよ

こう言うの　ご主人たちは

しんぞうにわるいって言うんだっけ

遊べるものも無いし

しばらくは眠っておくしか無いかなぁ

僕は今　箱の蓋が開かれるのを待っている

そもそも何でこんな所に入ってるかと言うと

実は僕自身のミスだったりする

実は昨日からちょっと具合が悪いんだ

ご主人には気付かれてないけどね

それで家をふらふら彷徨って

開いてる小部屋を見つけたから入ったら

かぎが掛かっちゃって

出られなくなっちゃった

仕方ないからそこでしばらく休んでいたら

知らないオッサンが入って来て

僕を小部屋から出してくれた

出してくれた、までは良かったんだけどね……

そのオッサンは僕の首根っこを掴んで

隣の部屋に運んだら

この箱の中に下ろして蓋をしてしまった

箱の中に入った箱だったかな

さっきまでの小部屋と同じくらいの広さだけど

てつの棒でできたまどが無いのはつまんない

小部屋の入り口は開かなくなった後もちょっと動いてたのにさ

この箱の蓋は完全に動かないみたい

そんな訳で僕は今　この箱の中にいる

さっき外でバタバタと音がしたんだけど

耳を澄ませてもよく分からなかった

ご主人が来たような気がしたんだけど

そうだったらいい

いい加減　暗い所にいるのも飽きて来たよ

そうだ　退屈凌ぎにちょっと賭けようか

ご主人とその友達が時々やってた

僕もちょっと真似しよう

あの蓋が開いた時に誰がいるのかって言う賭け

あの蓋が開いて、ご主人がそこにいたら

思いっきりおでこをくっつけて、

思いっきり喉を鳴らして

思いっきり甘えよう

あのオッサンがいた時は

牙を剥いてやるけど

ちょっと楽しみになってきた

早く箱が開くといい

ここでちょっと寝てたら体の調子が戻って来たから

元気いっぱい準備万端。

箱の蓋が開くまで、そこに主人がいるかどうかは　わからない