第4話

 飯を食べ終えた所で少年に何があったのかを聞く事にした。


「そういえば自己紹介がまだだったな、俺はランドルーガー、呼びにくかったらランドで良いぞ? 一応、村勇者をやっている」


「勇者っていうと王国に認められた勇者様!? そんなすごい人に助けて貰ったなんて・・・あ、僕の名前はリーイスです。改めて、ありがとうございますランドさん!」


 驚きと憧れの混じった様子で少年がこちらを見ながら名前を教えてくれた。


「あー、よせよせ!村勇者なんてそんな大層なもんじゃない、普通にしてくれ」


 いやマジでギリギリ勝っただけだからな。村の大会の決勝であれだけ強いって事は、街や王都の大会はどれだけレベルが高いんだか・・・


「んで、何があったんだ?」


「そう・・・ですね、何処から言えば良いのか・・・」


 そして、少年が何があったのかを教えてくれた。

 どうやら、このダンジョンで隠し部屋を見つけ、中に入ってみると部屋に宝箱だけがあった。怪しさ満点なのでトラップを警戒しつつ宝箱を開けると中から剣が出てきて・・・


「そのトッコー?ていう戦士の子がその剣を手に取って見つめた後、急に何かを呟き出して味方に斬りかかったと・・・」


「はい、ターエル君・・・あー、盾役で重戦士の子が1番近くに居たから最初に斬りかかられて、傷を負いました。それでもみんなを逃がそうとしてくれてたので・・・」


 それを補助しようと呪文を詠唱していた時に、吹き飛ばされてきた重戦士のターエル君に激突され、この少年だけ転移の罠を踏んでしまったらしい。


・・・そんな事ある?


「んで?転移先から合流する為に移動していたらハンマーヘッドゴリラに鉢合わせて全力で逃げて、距離を置いた所で体力が尽きて気絶したと・・・」


「はい・・・」


 それから少しして、俺が見つけた感じだな。つまりパーティーメンバーがどうなってるかは分からないわけか・・・


「それにしても良くハンマーヘッドゴリラから逃げられたな?結構速かったろ、ナックルウォークだったか?」


「一応僕は付与師なのでスピードアップを自分に掛けて死に物狂いで全力で走りました」


「ん?スピードアップ・・・あー、なるほどなぁ」


 スピードアップってのはほんの少しだけ速度を上げる程度の魔法だったはずだから、リーイスは見かけによらず身体能力が高いんだなぁ。

 そんな事を考えていると


「それで、ですね・・・助けてもらった上に、こんな事をお願いをするのは心苦しいのですが、どうかパーティーメンバーを一緒に助けに行って貰えませんか?報酬はなんとかして払いますので、お願いします!」


 覚悟を決めた顔で必死に頭を下げて懇願してくるリーイス。


「いや、そう言われてもなぁ・・・傷を治したとは言えリーイス、お前の体力は回復してないだろう?」


 かなりの疲労が溜まっているだろうリーイスを見て言うが・・・


「た、大切な幼馴染達なんです!お願いします!!」


 んー、どーすっかなー。この少年のパーティーは戦士と付与士が居なくなって、戦力が下がった状態で手傷を負っている。治癒師は居るそうだが重戦士の子は結構重症みたいだし、斥候の子だけだと戦闘継続は難しいだろう。

 となれば、同じように転移の罠でも踏んでない限りは、無理矢理移動はせず、何処かで身を潜めて救助を待っている可能性がない事もないか・・・

 危険はあるが救出出来る可能性が無いわけではなさそうだ。決して、何度も頭を下げてくるリーイスの熱意に負けたという訳ではない。

 言うなれば、これは勇者の仕事だ。人助けをしない勇者とかで目立ったら困るからな。適度な感じで一般の有象無象勇者に紛れる為に仕方なく。そう、仕方な〜く助けに行くのだ!


「しゃーねぇ、乗りかかった船だ。助けに行くか!」


「本当ですか、有難うございます!」


 パッと顔を上げた少年を見て、一応注意しておく。


「ただ、最悪の事態は想定しておけ。絶望した瞬間ってのは致命的な隙ができて命取りになるからな」


「・・・そう・・・ですね、分かりました」


「それと・・・今すぐ動きたいだろうが、我慢して少し寝ろ。体力が回復していない今の状態じゃ連れて行けない」


 リーイスを寝かしつけて装備の確認をしていくのだった。





「そんじゃまぁ、出発するか!」


 リーイスの体力が多少回復したところで出発する。


『さぁ、逝きましょう!今、行きましょう!すぐ行きましょう!私の斬れ味ゲージは最大値です!』


「ランドさん、張り切ってくれてありがとうございます!」


「あー、嬉しそうにお礼を言っている所悪いんだが今のは俺の言葉じゃない。それと、俺に斬れ味ゲージなんて存在しねぇよ?」


 俺の事を何だと思ってるんでしょーねぇ?この少年は・・・まさか勇者にはそんなクレイジーなゲージがあるとでも噂されてるのか?

 え、もしかして持ってない勇者は俺だけ説!?


「え?では誰が・・・」


 困惑して辺りを見渡しながらリーイスは声の主を探している。


『マスター!この道をまっすぐ進んで突き当たりのT字路を右に曲がって50m進んで左の抜け道を356歩進み回れ右をして56歩進み左手の通路を真っ直ぐ突き当たりまで行った先に斬りごたえのありそうな獲物の気配を感じます!」


「うん?なんて??というか、やけに詳細に言ったなお前。今まで大人しいと思ってたのに急にどうした?」


 今まで人前で喋る事も無かったし、リーイスが目を覚ます前くらいから大人しかったから人見知りが激しいのかと思ってたんだが、どうやら違うようだ。

 それと、他の人にも声は聞こえるんだな。あれ?これバレるとマズいやつか?・・・

 今まで聖剣が喋ったなんて聞いた事は無いが知らないだけでそういう聖剣も居るかも知れない。

 そして、魔剣が喋るという事も聞いた事が無いだけでそういう魔剣も・・・いやコイツがそうだったわ。。。

 それにもう俺の言葉じゃ無いって否定しちまったぞ!? つまり、聖剣ではなく魔剣を所持しているとバレてしまったら・・・


「ランドさん、もしや・・・」


「ギクゥッ!?」


 やばい、バレたか!? 冷や汗がダラダラと流れているのを感じる。さようなら俺の人生。そして、孤児だった俺を育ててくれた村のみんなありがとう。先立つ俺をお許しくださ・・・


「精霊様と契約されているのですか!?」


「え?精霊?・・・」


「違う・・・のですか?」


「あ、あああそうそう精霊だ、精霊!よく分かったなリーイス」


「わぁ〜、やっぱりそうなんですね!僕、精霊様と契約されてる人を初めて見ました。それが僕を助けてくれたランドさんだなんて、流石勇者様、感激です!!」


 テンション駄々上がりのリーイスには悪いが、このまま誤解して互いにウィンウィンな関係で居てもらおう。言いふらされても困るので、口止めしておかないとな・・・なんて考えていると。


『む?私を精霊等と勘違いしてもらっては困ります。私は由緒正しき魔剣・・・』


「んんーーーーゴホンゴホンッ!!!」


「ランドさん、大丈夫ですか?」


「ああ、いやコイツは負けん気の強い精霊でな・・・聖剣に宿って力を貸して貰ってるという訳だ。あと、この事が周りに知られて目立ち過ぎると勇者としての活動がやり難くなるから、他の人には黙っててくれよ?」


 人差し指を口元に立ててお願いする。


「分かりました!」


 リーイスが素直な良い子で良かった。。。


「それじゃリーイス、俺が先頭に立つから道案内を頼む」


 そう言って進もうとすると、思案顔のリーイスが提案してきた。


「それなのですがランドさん、先程精霊様が言われていた場所が僕やパーティーメンバーが通ったルート上にあるんです」


「分かった、とりあえずそこに行ってみよう。もしかしたら、その付近にパーティーメンバーが居るかもしれないからな」

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勇者に任命されて受け取った聖剣が呪われた魔剣だった話する? ゴールドブック @kinhon

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