第16話 愛し方の分からない公爵様-オスカーside-
「フローラ様はきっと、あの髪飾りがぼっちゃまからだと気付いておられます」
「何っ!? 一体なぜ?」
「以前にわたくしめがフローラ様へ、その髪飾りがお気に入りなのですね、と伺ったことがございます」
「ほう……彼女はなんと?」
「『オスカー様の魔力を微かに感じるので』と、フローラ様はお答えになりました」
「魔力だと? 俺は魔力を送り込んだ覚えなどないぞ」
「人は強い気持ちがこもると、自然と魔力をその物へ込めてしまうのは、ぼっちゃまもご存知でしょう」
「それは、そうだが……」
「ぼっちゃまはフローラ様を愛しておられるのでしょう。ですが、彼女への愛の伝え方が分からないのですね」
「分からない……俺は確かに彼女へ特別な感情を抱いている。だが、これが愛なのかどうか、イマイチよく分からないんだ……」
「では、なぜその箱をお渡しになりたいのでしょう?」
ばあやにそう尋ねられ、俺はこの箱の中身を購入した時のことを思い出す。
「フローラの……彼女の、喜ぶ顔が見たいからだ。それに、毎日笑顔で俺を癒やしてくれる、その感謝の気持ちというか……その分かりやすい表現が、贈り物だと思った……」
「フローラ様が来られるまで、遅くなる時はお屋敷に戻られずに帝国軍の宿舎で寝泊まりをしていたのに、今は毎日必ず夕方には戻られますね」
「そうだな……早く帰れるように努力をしている」
「フローラ様に会いたい、喜ぶ顔がみたい、何をして過ごされていたのか気になってしょうがない、得意ではない白魔法を毎日彼女へかけ続ける、そのお気持ちを贈り物という形で彼女へ伝えたい。それは、全てぼっちゃまの“愛”です。あなたは確かにフローラ様を愛しておいでです」
「そう、なんだな……。というかなぜ白魔法をかけていることを……」
「これは賭けでしたが……毎日フローラ様のお身体を洗うたびに薄くなっていましたので、ぼっちゃましかいらっしゃらないかと……。どうやら当たっていたようですねぇ」
「ばあやには敵わないな……。なら、自分で渡す、だから、せめてなんて言ったらいいか教えてくれ……」
「格好良く、言おうとしなくていいのです。あなた様が今感じてばあやに話してくれたように、そのままの形でお伝えすればいいのです。きっと、フローラ様はお慶びになります」
「そう、か……。努力、してみることとしよう……」
「はい、ばあやは応援しております」
俺は急いで屋敷に戻り寝室へと向かったが、フローラはいつものように既に寝てしまっていた。
俺はいつものように彼女の身体へ白魔法をかけると、少し髪を撫でて、自身も布団へと潜り込んだ。
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