第14話 幸せの日々に感謝の祈りを
私がシュナイダー公爵家に嫁いで、あっという間に1ヶ月が経った。
私のやせ細っていた身体は、この1ヶ月で健康的な体型へと変わっていった。
オスカー様は相変わらずお忙しく、朝食の時と夕方頃帰宅されてからしかお話をする機会はなかったけど、彼は必ず私のその日の過ごし方を聞いてくれた。
オスカー様は1ヶ月経った今でも私のいる寝室には来ないようだったので、オスカー様は別のお部屋で寝ているのだと、信じて疑わなかった。
ばあやが寝室は同じはずだと言っていたので少し寂しい気持ちもあるけど、元々政略結婚だったため、一緒に寝たいなどそんな贅沢言うべきではないと、私は自分に言い聞かせている。
⸺⸺
ルスティの町の人たちともすっかり仲良くなり、最近の町の事情を話してもらう。
「フローラ様がシュナイダー家のお屋敷にいらした頃からだよ、作物の出来がすごい良くなってねぇ、今年は領外にも輸出ができそうなんだ」
ふくよかな女性がそう言って嬉しそうに笑う。
「フローラ様聞いておくれよ、うちの家畜も最近なんだか元気が良いみたいでね、ミルクの出がいいんだ」
「フローラ様がいらしてから良い事ばかりだよ」
「フローラ様!」
「あっ、フローラ様だ、こんにちは!」
気付けば町の人たちに囲まれていた。
「それは良かったです。はい、皆さんこんにちは」
私も一緒に来ているレベッカも自然と笑顔になる。
そして屋敷に戻ると、ばあやにその日の出来事をベラベラと話すのが日課になっていた。
「それでね、ばあや、マイク様がね……ねぇ、ばあや、ちゃんと聞いてる?」
「はいはい、フローラ様。このばあや、バッチリお聞きしていますよ。えーっと、なんでしたかねぇ……」
「もー、ばあや、ちゃんと聞いてないじゃない……!」
「いえいえ、このばあや、バッチリお聞きしていますとも……!」
⸺⸺
最近の私には、もう一つ日課がある。それは、自室のバルコニーで、感謝の祈りを捧げることだった。
「今日も1日幸せに過ごすことができ、ありがとうございました。この幸せが、明日もシュナイダー領の皆へ訪れますように。オスカー様が、明日も無事にこのお屋敷へ戻られますように。どうか、どうかお願い致します」
私は胸の前で手を組み祈りのポーズをして、目を閉じ神経を集中させた。
すると、私の周りに柔らかな風が巻き起こり、その風は私の白い魔力を乗せて、シュナイダー領の全域へと吹き渡っていった。
アーレンスにいた頃も祈った時にこうなったことがある。
これが何を意味しているのか全く分からなかった。
でも、私のこの感謝の祈りがシュナイダー領の皆へと届いているような気がして、私はこの祈りを毎日続けることにしていた。
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