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創さんと最後に会ってから、もう2ヶ月が経った。
大学の前期の試験は終わり、今は8月。
就職活動は、選考に進んでいる企業、また新たにエントリーしている企業、バイトもしながら毎日頑張っている。
家で履歴書を書いていると、スマホが震えた。
愛実からメッセージが届いた。
《海行きたーい!!
少し息抜きして遊びに行こう!!》
創さんとのたった1週間の初恋があっけなく終わり、それからわたしは試験勉強に就活にバイトに忙しくしていた。
そうでないと、創さんのことを考えて苦しくなってしまうから。
「たしかに、少し息抜きしたいな・・・」
愛実のこういう行動力にはいつも救われる。
返信をすると、「一緒に可愛い水着買いに行こう!」と誘われ翌日に買い物に行くことになった。
次の日
「ねぇ、これ可愛い!!
わたしセクシー系より可愛い系がいいんだよね~。
友里はどんなのにしたい?」
「わたしは肌あんまり出てないやつがいいんだよね。
これとかは?」
「ん~?ダメダメ!せっかくピチピチの大学生なんだからもっと肌見せないと勿体ないって!
今しか着れないんだから!」
「でも恥ずかしいよー。」
「着たいと思った時にはもう着られなくなってるかもしれないんだから、絶対今が着る時なんだって!」
水着選びの時、愛実がこう言った。
普段だったら「愛実はそうだよね」で終わる話だけど、この時はすごく説得力があった。
バッグからスマホを取り出す。
メッセージの確認をして、誰からも届いていないことにため息をつく。
「もう連絡しないから」と言った通り、創さんからのメッセージが届くことはなかった。
「もう二度と会わないから」と言った通り、会えるキッカケも作ってくれなくなった。
何も知らない愛実と学さんがまた4人で飲もうと言ってくれ、実はわたしは何度か参加した。
でも、創さんは絶対に来なかったし、愛実と学さん2人の時も来なくなったそう。
前はたまに来ていたそうなのに。
創さんとのメッセージのやり取りを見る。
たった一週間のことだったのに、沢山メッセージのやり取りをした。
創さんと会えなくなってから、わたしなりに色々と考えてみた。
たぶん、創さんは、わたしと付き合うのは無理だけど、体だけの関係にはなりたかったんだろうなって。
それに気付いてから、わたしは後悔ばかりしている。
あの時・・・
聞かれた通り、ホテルか創さんの部屋に行けばよかった。
それで、創さんに抱いてもらえばよかった。
そうしたら、創さんと今でも会えていたに違いないから。
毎日メッセージが届いて、週末は誘ってくれて、優しく指を絡めてくれて・・・。
優しく、キスをしてくれて・・・。
わたしとは無理って言われただけで、あんなに簡単に「会えない」って言わなければよかった。
もう少し、もう少しだけ頑張ってみればよかった。
そしたら、もしかしたら、もしかしたら・・・
創さんはわたしのことを好きになってくれたかもしれない。
愛実の言うとおりだね。
会いたいと思う時には、もう会えなくなってる。
もう、二度と、会えなくなってしまった。
「ねぇ!これ友里に絶対似合う!」
沈んでいる中、愛実の明るい笑顔と愛実が持つ水着が視界に入ってきた。
そして、海に行く日に。
愛実が選んでくれた水着を旅行鞄に詰める。
愛実の提案で、せっかくだから日帰りではなく近くのホテルに一泊することになった。
久しぶりの旅行にウキウキしながら、8月の暑い日射しの中、待ち合わせ場所まで急ぐ。
「うーーーみ~~~!!!!
ねぇ、やっぱり海見るとテンション上がるよねー!!!」
「そうだね~!砂浜あつーい!」
宿泊するホテルに荷物を預け、水着とスマホとお金少し、タオルとレジャーシートだけを持って目の前の海にやってきた。
着替えが出来る個室に愛実とそれぞれ入り、水着に着替える。
水着に着替え、わたしはなかなか個室から出られないでいた。
「友里~?まだー??」
ドアの外から愛実に声を掛けられる。
水着を選んでいた日、勢いで愛実が選んだ水着を買ってしまったけど・・・
ドアを恐る恐る開ける。
「ちょっとセクシー過ぎないかな・・・??」
ソーッと愛実の前に出る。
わたしの水着姿を見た愛実は、もう弾けるような笑顔になった。
「やっぱりその水着大正解!
友里に滅茶苦茶似合う!
てか、美人でスタイル良くて胸まで大きいとか、神様に贔屓されすぎでしょ!」
大きな声で笑い、「髪の毛やったげる!」と髪の毛をアップにしてくれた。
「ほら、見て見て~、最高傑作だよ!」
愛実はそう言うと、わたしを全身鏡の前に連れてきた。
愛実が選んだのは、黒のビキニ。
しかも、胸のラインが結構際どくて・・・
「ちょっと胸見えすぎじゃないかな?
大丈夫かな・・・??」
と心配になる。
「その胸は見せた方が胸も幸せだって!
海にまで来て隠してたら本当勿体ない!」
胸の幸せまで出て来て、わたしはもう諦めた。
愛実と2人、砂浜にレジャーシートを敷く。
「手伝おうか~?」
と、急に声を掛けられた。
見てみると、男の人2人組。
「すごいね、キミ達2人ともすげー可愛いね!」
「2人で来たの?
俺達も2人なんだよね、一緒に遊ぼうよ。」
すごくイヤな笑い方をする人達。
水着に着替えてからここまで来る間も、数組の男の人から話しかけられていた。
愛実は無視をして、スマホをいじりながら歩いていた。
わたしも無言で愛実の後を追っていた。
愛実とレジャーシートを敷き終わり、愛実が座った。
「無視しないでよ~。
どこから来たの?」
「てか、本当可愛いね。
何ちゃんっていうの?」
無視をしていてもしつこい2人に怖くなり、
「愛実、行こう?」と話し掛ける。
愛実はまたスマホを見て、
「もう少しここにいよう、日焼け止めも塗りたいし。」と。
「あ!日焼け止め塗るの?
俺らが塗ってあげるよ!
俺塗るのマジ上手いからね~!」
「ギャハハハ!お前絶対エロいやつじゃん!」
下品な笑いが響き、わたしはすごく怖くなる。
「黒ビキニちゃんは俺が塗ってあげる。
ほら、おいで!」
わたしは腕を無理矢理引かれ、愛実が「ちょっとやめてよ!」と叫ぶ声が聞こえた。
「やめてください・・・!」わたしも必死に腕に力を入れ抵抗する。
「大丈夫、俺に全部任せれば大丈夫だって!
その美味しそうな胸も、絶対日焼けさせないようにちゃんと塗り塗りしてあげるから!」
そう言って、わたしの胸に手が伸びてきた・・・
その瞬間・・・
「俺の連れなんで、やめてもらえます?」
伸びてきた手が掴まれ、低い声が頭の上で響いた。
その声にキュッと胸が苦しくなり、恐る恐る顔を上げた。
「創・・・さん・・・?」
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