4

1

土曜日の午前中、企業の会社説明会では多くの学生が集まっていた。

わたしもリクルートスーツを着て参加。

創さんのことはモヤモヤしていたけれど、リクルートスーツを着ると切り替えられた。




受付で大学と氏名を伝え、資料を受け取る。

広い会場の中、パイプ椅子に座った。

予定時刻ピッタリに説明会が始まり、12時前に無事に終了した。





会社の近くでお昼ご飯食べて帰ろうかなとお店を探していたら、肩を叩かれた。





「キミ、隣の席に座ってたよね?」




振り向き確認すると、言われてみれば隣の席に座っていた男子だったように思う。




「たぶんそうですかね?」



「それくらいの認識なんだ、キミ面白いね!」





何が面白いのかサッパリ分からず返事出来ずにいると、男子はペラペラと喋り始めた。




名前は?大学は?学部は?この企業受けるの?サークル入ってるの?

道端での質問責めに戸惑いながら、答えても大丈夫そうな質問だけ答えて、あとははぐらかしていた。





「で、彼氏いるの?」




急にそんなことを聞かれ、固まる。




「なんでですか?」




「そんな警戒しないでよ、こんな美人が隣の席に座ってたら当然追いかけるでしょ。

彼氏いないならさ、昼ご飯でも一緒に食べようよ?奢るし!」




「彼氏はいませんが、今は一人で食べたい気分なんです。ごめんなさい・・・」





自分としては結構強めに断ったつもりでいたけど、男子はその後も歩きながらずっと話し掛けてきた。

もう面倒になって、お昼ご飯を食べずに電車に飛び乗り、その男子から逃げた。





電車に乗りホッとしていると、スマホが震えた。

創さんからのメッセージだった。




《会社説明会お疲れ。

今日は何食いたいか決まった?》




短い文面なのに、それだけで心が温かくなった。

先週の金曜日に再会し、すごく強引だなと思うことも多かったけど、イヤな気持ちになるどころかドキドキが増すばかり。

創さんってやっぱり恋愛経験豊富なんだろうと尊敬ばかりだった。





さっきまでは、今日は創さんに会うかどうか悩んでいたけど、今は無性に会いたくなっている。

17時まで待てないくらいで、今すぐ会いたい。

自分にこんな感情があったことに驚く。




少しだけ考えて、返信をした。




《会社説明会行って来ました。

今日はお肉が食べたいです。

お肉沢山食べたいです。》




お昼ご飯を食べ損ね、今すごくお腹が空いているのでこんなメッセージになってしまった。





一度家に帰り、いつもより可愛い洋服を自然と選んでいた。

あまり可愛い服装は似合わないので、自分の中で似合うギリギリの可愛い洋服。

ストレートの髪の毛は少しだけ巻いて、ヘアアレンジをして結んだ。

最後に小振りのネックレスを。

男の人と2人で会うためにお洒落をしたのは初めて。





時計を見たらちょうど良い時間になっていたので、バッグを持って少し急いで駅まで向かい電車に乗った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る