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その後、学さんや愛実が色々言っていたけど、何も頭に入ってこなかった。
どうやってお開きになったのか覚えていないくらい、わたしの思考は停止していて。
気付いたらお店を出ていて、隣には先週の金曜日と同じように創さんが歩いていた。
「お前、そんなに飲んだか?
先週よりフラフラしてるぞ?」
わたしに優しく笑い掛けながら、創さんはわたしの右手をソッと触れて・・・
優しく指を絡めてきた。
一気に身体が熱くなる。
胸が苦しいくらいキュッとして、涙が溢れそうになり慌てて下を向く。
「1人で・・・ちゃんと歩けます・・・。」
そう言って、絡まった指をほどこうと力を入れる。
「危ないから。」
すぐに力を入れられ、絡まった指はキツく結ばれる。
頭の中には、創さんの言葉が何度も繰り返される。
“早川とは無理だろ。”
“早川とは無理だろ。”
じゃあ、どうして・・・??
どうして・・・??
「明日、何食いたい?」
創さんは力の入らないわたしの右腕を引き、わたしの身体は創さんの左側にピタリとくっついた。
「明日・・・」
回らない頭を必死に動かす。
明日も会うの・・・??
なんでわたしに会うんだろう・・・??
なんでわたしに・・・こんなことするんだろう・・・??
「なんだよ、その顔。
明日も会う約束してただろ?
もしかして忘れてたのか?」
創さんは優しく笑って、人混みから外れ狭い道にサッと引っ張った。
「明日、何食いたい?
お前の食いたい物食いに行こう?」
そう言いながら、両手をわたしの腰に回し抱き締めてきた。
「そ、創さん・・・!!」
わたしは両手で創さんの胸を押し、上半身を後ろに反らし少しでも空間を作る。
「創さん・・・離してください・・・」
恐る恐る創さんを見上げると、意地悪な顔でわたしを見下ろした。
「キス、する?」
「キス・・・??」
「今日はしてもいい?
心の準備出来た?」
ビックリして固まるわたしに、熱い視線になった創さんの顔がゆっくりおりてくる。
「や・・・っ、ダメ・・・!!創さん・・・!!!」
わたしは必死に下を向き、創さんの胸を押す。
「じゃあ、明日・・・何食いたいか答えて?」
声しか聞こえないけど、その声からは笑っているのが分かる。
また、わたしをからかったんだ・・・。
涙が溢れそうになるのを何度も我慢する。
「創さん・・・」
「ん?」
「なんで・・・明日もわたしと会うんですか・・・??」
泣きそうになっているのがバレないように、必死に声を出した。
創さんは腰に回した両手にギュッと力を入れ、わたしの身体も顔も創さんの身体に引き寄せられた。
「また会いたいからに決まってるだろ。
それ以外に理由があるわけねーだろ?」
またそんなことを言われ、わたしの頭はどんどんグルグル回っていく。
“早川とは無理だろ。”
“早川とは無理だろ。”
創さんの言葉が何度も何度も響き渡る。
わたしとは・・・付き合えないのに。
付き合えないのに、また明日も会いたいの・・・??
分からない。
わたしには分からないよ。
今まで恋愛をしたことがないわたしには分からないよ。
でも、これだけは分かる。
わたしは、創さんに惹かれている。
だから、わたしとは無理と言っている創さんとこれ以上会ってはダメ。
これだけはちゃんと分かっている。
「早川?」
呼ばれて、思わず創さんを見上げた。
3年間、わたしに気付きもしなかった人が、わたしを優しく見詰めている。
「明日、何食いたいか決めておけよ?」
優しく笑いながらソッと頬を撫でられた。
わたしの心が、危険だと叫んでいる。
これ以上、創さんと会うのは危険だと。
「早川?」
「はい・・・。
また明日・・・。」
わたしの心は、ずっと警告音が鳴り響いていた。
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