第2話:君の名前はトマト。

で、博士と立郎は開いた卵の中を、恐る恐る見た・・・。

そしたら、なんと・・・なんとそこには?・・・。


ひとりの女の子が卵の中で眠っていた。


「女の子が入っとるぞ」


「まだ子供じゃん」

「この子、どこから来たんだろう?」


「そりゃおまえ、遠い宇宙からだろ?」


「なんでそんなこと分かるんだよ」


「空から降って来たからに決まっとるだろ?」


「じゃ〜宇宙人とか異星人の持ち物とか?」


「ん〜かもしれんが・・・」


「じゃ〜取り返しに来るかも?」


「取り返しに来たら、鶏の卵でも返しときゃええんじゃ」


「大きさが違うからすぐバレるだろ?」


「拾った時には縮んでたと言っとけばよかろう?」


「どうしても返したくないんだね」


「科学者として、こんな珍しい媒体見逃すわけにはいくまい?」


「中身は女の子だし・・・放っておいて餓死しちゃったら可哀想だしね」

「じゃ〜俺んちの養女ってことで・・・」


「決まりじゃの」


おもちゃだとも知らずにふたりは適当なことを行ってると卵の中の女の子が

ぱっちり目を開いた。


「お、目を覚ましたぞ・・・」


目を覚ました女の子は、丸く収まっていた体を伸ばそうと上半身だけ起こした。


「か、可愛い・・・」


「なにを言っとるんだおまえは?」


女の子は周りを見渡したあとで、ふたりの方を見て言った。


「こんちちは?」


「あ、しゃべった」

「こ・・・こんにちは?」

「君、誰?」


「私?あなたのおもちゃ」

「だから、あたながお名前つけて?」


「あ〜そうなんだ・・・そうだな・・・何にしようかな?」

「え〜と・・・じゃ〜・・・トマト」


「君の名前は今日からトマトだよ」


「タモリ?」


「トマト」


「サンマ?」


「違う!!・・・ト・マ・ト」


「タケシ?」


「わざと外してるだろ」


「あはは・・・なんで、トマトなの?」


「俺の大好物がトマトだからさ・・・」


「大好きが一番・・・分かった・・・わたしの名前はトマトね」


それがトマトと博士と立郎との出会いだった。

誰かがトマトを迎えに来るとしてもその間は博士と立郎で面倒を見ること

になった。


トマトは生まれたばかりみたいだから歳は0歳ってことになるんだろうけど、

見た目は10〜12歳くらいか?


結局、データ不足でトマトの正体は謎・・・ただ人間じゃないことだけは

たしかみたいだ。

体をスキャンしたところ体内は機械じゃなく、ちゃんと内臓があった。

機械でもない、プラスチックでもない、ロボットでもないし、アンドロイド

でもない。

かと言って人間の細胞とも違う。

地球人には見たこともない新しい素材で作られてるみたいだった。

衝撃に強くしなやか・・・なんとも不思議な皮膚を持った女の子だった。


宇宙には人類より科学技術が発達した文明を持った生命体もいるのだ。

たとえおもちゃと言えど、かなり進歩してる文明の持ち主なんだろう?

今の科学で精一杯の博士に理解できないのはあたりまえのことだった。


トマトはその日から立郎の妹ってことでお茶柱家の家族になった。

そしてすぐにふたりに馴染んだ。

博士と立郎と一緒にご飯を食べて、今までずっと一緒に暮らしてたみたいに、

順応性に長けた子だった。


そして、その日は穏やかな休日。

学校も休みで、立郎は家にいた。

そんな静寂を破るように天罰博士がまたやってきてお茶柱博士の家の前で

怒鳴っていた。


「やい、お茶柱〜・・・出てこい、今日こそ決着をつけてくれようぞ」


「じいちゃん・・・あの人また来て怒鳴ってるよ」


「またか?・・・毎日毎日、ご苦労なことじゃな?」


「今日は最強でイケメンロボットの「チョコマカロン 」を連れてきたぞ」


チョコマカロンは名前は可愛いが、身長6メートルもあるデカくてゴツ

くて体のあちこちにトゲがあって、いかにも強うそう〜なロボットだ。


「おまえんちのできの悪いロボットとチョコマカロンを戦わせて負けた方が

百万円払うってのはどうだ?」


「せこいやつだのう」

「わしんちのは今、故障中じゃ」

「完璧な状態じゃったら返り討ちにいてくれたのにのう」


「なんでもいいから代替えのロボットはないのか?」

「ん?おい、お茶柱・・・おまえの後ろにいるちっこいやつは誰だ?」

「毎日おまえんちに来てるが初めて見るぞ」


「ん、っちっこいやつ?」


お茶柱博士は後ろを振り向いとトマトが立っていた。


「トマト、家の中に入っとれ・・・立郎、トマトを頼む」


「ほいほい・・・トマト危ないから家の中に入ろう?おいで・・・」


「一緒に遊び〜ましょ?」


トマトは自分と同じ匂いを感じたのか天罰博士を無視してチョコマカロンに

近ずいていった。


「こらこら行くなトマト・・・戻れ」


そう言うか言わないかのうちに、チョコマカロンが腕を思い切り振り上げて、

トマトめがけ振り下ろした。

ドコーンって地響きを立て、ものすごい音がしてトマトはチョコマカロンの

大きな手の平でペチャンコにされてしまった。


「なんちゅ〜ことを・・・トマト」


「わは〜、じいちゃんポシェットがトマトにされちゃったよ〜」


「天罰、おまえなんてことしてくれるんじゃ」


「わしは知らんぞ、おまえんちのちっこいのがチョコマカロンに近ずいたのが

悪いんじゃ・・・チョコマカロンは危険を察知したから対応したまでのこと」

「自業自得・・・自己責任じゃな」


「可哀想に、トマト・・・わしのところに来たばっかりに・・・・ケチャップに

なりおった」


外で大きな音がしたので、何事かとマンションの住人たちが様子を見に出てきた。


とぅ〜び〜こんて乳。


















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