アンパンマンマーチ
ライカ
第1話
『お! たくさんある』
僕の学校では一人一台タブレットが配られ、それでアンケートや課題を提出する。その日もやる意味あるのかわからない大量のアンケートを処理していた。
『へー喉自慢大会するんだ〜〜』
一つ気になるアンケートがあった。内容は文化祭の喉自慢大会について。いつも通り適当に説明文すら読まずにアンケートに入力して行った。
あとあと知ったことだけどアンケートの説明欄の一番上に出場希望者のみ入力と書いてあった。
そんなとこ見ずに質問に答えていった。
『選曲?、え!課題曲の投票できるんだ!へーなら……』
説明文すら読んでないのにその単語を見ただけで出場者たちの課題曲を投票できると勘違いして、ワクワクしながら考えた。
『ん〜ま〜なんとなく、アンパンマンマーチで!』
僕は選曲をアンパンマンマーチにした。どうせ選ばれないだろうけど面白そうという浅はかな考えで選んだ。自分が歌うのだとは知らずに。
数週間後、喉自慢のアンケートなんて事を忘れた頃。
『あ!そういや、お前、喉自慢大会出るんだってな!頑張れよ!』
いつものようにダラーと朝の朝礼を聞いていた時に突然担任が僕に言った。
『え……』
寝耳に水なんて比でも無いぐらいの衝撃を感じた。目の前で巨大な爆弾が爆発したみたいだった。
『え、いや、その僕、そんなの応募して無いですよ!』
僕はすぐに席をたち、担任のいる教卓の前に急ぐ。
『あれ?そうか?……いや、ほら名簿にあるぞ、は?!選曲はアンパンマンマーチ!? お前変なの歌うな』
担任は僕にその名簿を見せた。きちんと僕の名前とアンパンマンマーチがあった。
『はえ……』
衝撃すぎて僕はその場で止まってしまた。
『辞退したいんですけど』
教室から出ようとドアに手をかける担任に僕はそう訴える。
けど、
『いや、文化祭関係は教頭担当だからそっちに聞いて……』
そう、担任は言って去った。
辞退ができないし、もうみんなにバレたしでしょうがなく僕は出場することにした。
諦めて即日、塾に行くのをサボって家近くのカラオケ屋に行った。
67点
これが最初の点数だった。
『おわた』
結構この時はショックと絶望でいっぱいで、辛かった。
親には塾行ってると言いながら家近くのカラオケ屋で永遠と店員に怯えながらアンパンマンマーチを歌い、1時間以上遅刻して塾に向かう毎日を過ごした。
マジで、財布からは毎日昼ご飯代が消えるし、塾行ってると親に嘘つくの辛いしで地獄。
そんな日々を続けて2ヶ月。
まあ、アンパンマンマーチも総額2万円を犠牲にしたからか、常に85点以上は取れるようになっていた。
そして本番当日。これまでの短い人生の中で最悪の日が始まった。
喉自慢大会は午前に体育館で行われる最初のイベントだった。おかげで、売店準備の無い大体の生徒が体育館に来ていた。
僕は3番目に歌う。ステージ裏の準備室で1番目の人の歌を聞いた。うまかった。それ以外感想なんてない。2番目は覚えてない。あるのは吐き気の記憶。気づいたら終わっていて。ついに僕の番になった。
『3番の人!ステージ入って!』
係の生徒に呼ばれ、ステージに追い込まれた。
天井のライトが眩しくて目を細めても体育館にはたくさん人が居るのがわかった。
『続いての曲はアンパンマンマーチです!』
司会の声と同時にメロディが流れた。
『そうだ! うれしいんだ! いーきるよろこび!〜〜』
最初はなんだ簡単なので上手く行った。
『〜〜〜〜』
歌ってみると簡単なもので、メロディーに合わせて練習どうりできた。
(ん?!)
僕は少しライトが眩しいので目を下にやった。
いつも練習中毎回視界に入るはずの黒いマイクがなく、僕の強く握り締めていた拳が唇に強く押しついているだけたった。
『あ』
僕は驚きで一瞬か、数秒か止まってしまった。
そこからは悲惨だった。たった一瞬テンポが遅れただけでアンパンマンマーチは別曲の様に変身した。
『よろこびー、ん!? え、あ! ほほえんで……え!? あ!』
もう、僕はまともに歌えなかった。頭真っ白て言うか視界も聴覚も全てがおかしく感じた。
『え、えーと、3番さん、あ、ありがとうございました』
意味不明になったメロディーが終わり呆然と立ち尽くしていると、司会の人がぎこちなく進行した。
『それでは採点です。〇〇先生から順にお願いします』
『えーと、3点かな?最初は上手くやったねうん』
『1点です。きちんと練習しましょう』
『5点です。もっと……』
『では、3番さんに拍手を!』
教師全員の採点を聞いて司会がそういうと。
僕の辛い喉自慢大会は終わった。
おわりちゃんちゃん
アンパンマンマーチ ライカ @rururu1123
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