第3話 唐突な誘い

時刻は21時。

途中客に上手く紹介出来なかったのか手こずった。ましてや、昼間以降は追加の依頼もあったし。退社して街中の歩道を歩く。「随分遅くなった。ま、残業代しっかり出るからマシかー。」

車は通るが、歩行者は朝と比べていない。俺は免許は取得しているが自家用車は持っていない。単純にお金がかさむし社用車で営業は可能だからだ。あとは地下鉄や列車と交通の便が良いのも確かだ。

あ、前から走ってくる。白のジップパーカーでフードをしている。ペース速いなぁ。瞬間、後方から来る自動車のライトに顔が照らされ判別できた。ん??!あれは!今朝会った、えーと、天無、、健太!?

次第に5mまで縮まる。前を向いて走ってた健太は俺に気付いたのか、歩き始めた。スンとした表情のまま近寄る。「おや、奇遇ですね。陽介さん。」「お、おう。」早速会うのは何だか気まずい。健太はまた心を読んだのか「そんなに鉢合わせるの気まずいですか?まあ、会ったばかりですし。帰宅、でしょうか?」「ああ。残業して随分遅くなったけど。」「そうですか。お疲れ様です。…明日休みですか?」日程考えてたの瞬時に読まれたな。「ん?ああ、そうだが。」何だろ?

「明日余裕があれば僕と勝負してみませんか?これも何かのご縁ですし。」

勝負!?

「一体何の?」

「着いたらのお楽しみです。明日、あなたがいつも地下から階段を登る出入り口に集合しますか?時刻は午後13時。運動出来る格好で。面倒なら無理に来なくて大丈夫です。毎週僕一人で通ってますので。」

相変わらず変わり者だ。いきなり口約束で勧めてくるとは。にしても通う?一体何なんだろ?

俺はこの時既に彼の内から滲み出る活力に興味を示していた。因みに彼の汗ではない。

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