第15話 新人類の時代

求道者たちから生まれた"新人類"の存在は、やがて世界中に広まり、従来の人類社会に大きな変革をもたらしていきます。

新人類と呼ばれる彼らは、超越的な能力を発揮するのみならず、高次の精神性と倫理観を併せ持っていました。このため、新人類の出現は単に個人的な能力の向上にとどまらず、社会そのものの進歩をも促す影響力を持っていたのです。

最初は新人類への偏見や誤解から対立が生まれましたが、次第に彼らの資質が理解されるようになり、新人類と従来の人類との融和が進んでいきました。新人類から学ぶ機会を得た従来の人類も、精神的に成長を遂げていったのです。

そうした中で新人類の活躍の場が広がり、彼らはやがて社会の指導的立場に就くようになっていきます。新人類は政治、経済、科学技術、芸術、宗教など、あらゆる分野で革新的な役割を果たすようになりました。

特に科学技術の発達には目覚ましいものがありました。新人類による精神エネルギーの活用によって、物質世界を越えた新たな可能性が開かれたのです。

エネルギー変換技術、テレポーテーション、時間操作など、かつて夢物語と呼ばれていたことが現実のものとなっていきました。そしてそうした先端技術は、人類社会に大きな恩恵をもたらすことになります。

一方で、精神世界への扉が開かれたことで、さまざまな新たな発見もなされていきました。従来の宗教観が大きく更新され、生命の根源的な次元にまで思索が及ぶようになったのです。

このように、新人類の出現によって、人類の認識と可能性は飛躍的に拡大していきました。しかし同時に、新たな問題や争いも生まれてきます。

新人類の能力は時に暴走し、悲惨な出来事を引き起こすことも有りました。倫理性に欠ける者が力を濫用する事例も後を絶ちませんでした。新人類同士の対立からくる衝突さえ起こるようになりました。

徳訓とディーンをはじめとする長老たちは、こうした事態に危機感を抱き、新人類の力の行使を規制し、倫理性を重視するよう求めるようになります。

新人類社会の中に秩序を持たせ、調和ある発展を促すための枠組みを築く必要があったのです。このため、新人類の自治組織が設立され、権力の監視と能力者の育成が図られることになりました。

徐々に新人類社会には、一定の秩序が芽生え始めます。長老たちの指導の下、倫理と調和を重んじる方向に舵が切られていったのです。

しかしその一方で、この枠組みに反発する新人類も現れました。彼らは権力の規制に反対し、完全な自由を求めて過激な道を選んでいきます。

こうして新人類社会の内部に、倫理的な対立の種が生まれていったのです。調和を重んじる主流派と、自由を至上とする過激派との対立は、やがて新人類社会に大きな分裂をもたらすことになります。

新人類社会の行方をめぐって、熾烈な対立が巻き起こりました。その対立が、遂には大規模な内戦への火種となっていくのでした。

新人類が新しい文明の夜明けと期待されたはずが、意に反して大きな曲がり角を迎えることになったのです。徳訓とディーンをはじめとする長老たちは、平和的解決への道を探り続けますが・・・。


藤原徳訓

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