第14話 超越への道

徳訓とディーンは、新しい超覚醒の料理の力を確実に人類の精神的進化に役立てるべく、修行方法の改良を重ねていました。

この極めて強力な料理を安全に提供するには、求道者一人ひとりの精神的素養を徹底的に見極める必要がありました。二人は、求道者を選別する試練の課程を設け、そこで精神力の強さを計っていきます。

試練は肉体的にも精神的にも並々ならぬ困難が待ち受けており、多くの求道者がここで途中で力尽きてしまいます。しかし、試練を乗り越えた者には、新しい超覚醒の料理を食す資格が与えられました。

料理を食した求道者の中には、精神世界を覗き見る能力を得た者や、無我の境地に至った者もいました。このようないくつかのケースを見て、徳訓とディーンは、この超覚醒の料理が人類の可能性をさらに高い次元に押し上げる力を持っていることを確信しました。

しかし一方で、料理の力を制御できずに道を誤った求道者の姿も徐々に明らかになってきます。中には、自らの力に酔い、妄執に囚われてしまった者さえいたのです。

徳訓とディーンは、こうした危険性に対処するため、さらなる秘伝の解読と修行方法の見直しを重ねていきました。そして、ある時、新たな発見がありました。

新しい秘伝には、求道者一人ひとりの個性や適性に合わせて修行の方法を変化させる必要があることが示されていたのです。それまでの一律の修行方法では、求道者それぞれの精神的資質を引き出すことはできないというのが理由でした。

この発見を基に、徳訓とディーンは完全にカスタマイズされた修行プログラムを作成し始めました。そこには、肉体的トレーニングはもちろん、瞑想、精神統御の技法、さらには超常的な能力の開発法なども含まれていました。

求道者一人ひとりにあわせて設計されたこの修行プログラムは、それまでにない精度で求道者の可能性を最大限に引き出すことができました。その結果、超越的な能力を発揮する求道者が次々と現れ始めたのです。

例えば、ある求道者は精神を物質化する技術を会得し、あるいはまた別の求道者は時間を操る能力を手に入れました。こうした驚異的な能力の数々は、かつて人類が夢にも想像していなかったことでした。

しかし、一方でこうした超常的な能力を悪用する求道者の存在も無視できなくなってきました。徳訓とディーンは、修行プログラムに倫理観の育成を重視するようになり、求道者一人ひとりの心の在り方にも力を注ぐようになりました。

年月を経るごとに、妖精の森からは超人的な能力を備えた探求者の集団が生まれていきました。そして、そうした人々の存在は、次第に周囲の世界に影響を与えるようになっていきます。

世間の人々からは、驚きやあるいは畏怖の念さえ抱かれるようになりましたが、同時に、新しい可能性への期待も高まっていったのです。

徳訓とディーンの二人は、こうした動きをしっかりと見守りながら、求道者たちが人類の調和ある進化に寄与できるよう導いていきました。

そして遥か未来、求道者たちから生まれた「新人類」が、この世界に新たな文明の時代を切り開くことになるのでした。


藤原徳訓

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