勝負で勝つことばかり考えていた俺へ
元々、このエッセイは高校卒業記念として書いたものだった。それでも、続きを書こうと思ったのは……気恥ずかしいが『教科書』なんて大層な言葉を言ってくれたネッ友のおかげだろう。
前の自分が書いたものなんて覚えてなかったので見返したら、ネガティブだと感じた。当然、ネガティブな俺のありのままを話したのだからネガティブでおかしくないのだが、今日はまた違う話をしてみようか。
ここで語られるのは俺が思想を変えようと思った言葉、経緯について。
これまで思想なんていくらでも変えてきたし、名言なんて出せばキリがない(ReLIFEという漫画にたくさんある)。だから今回はそこの言葉は出さず、ネットでたまたま見かけたことから話してみようと思う。
その思想っていうのが『勝負の楽しみ方』について。
別に赤司征十郎ってわけでもないが、俺は『勝負は勝ちが全て』だと思ってきた。もちろん不正をしてでも、なんて思ってはいない。正々堂々勝負して、勝つか負けるか。『勝つことが喜びであり幸せ』だと思っていた。
部活も、ポケモンユナイト甲子園も、カクヨム甲子園だってそう。勝たないと意味がない。そのスタンスで動いていたし、部活に至っては大会参加費を払うので「一回戦を勝てなければお金がもったいない」なんて考えていたものだ。
まぁ、仕方ないだろう。『負けず嫌い』が根本にある俺なんだ。そんな考えに至るのも無理はない。
……いや、今でもそう思っている節はあると思う。けれど、『勝つこと”も”喜びであり幸せ』に思想を変えようと考えようと努力している。
とあるX(旧Twitter)のポストにて『上手くできないと面白くない、の思考の人はあまり長続きしないことが多いんですよね』という話題を見かけた。そこにはその人の友人のことが書かれていた。
端的に言えば、部活でずっと弱かった友人が最後の大会で二勝を挙げてベスト16入りをした。勝てなくてもずっと諦めずに楽しんでいた。というもの。
こんな嘘か本当かもわからないきれいごとに心を動かされたのか? 勝負なんて勝ちを前提に楽しむものだろう?
気持ちはわかる。俺もそっち側の人間だから。
しかし中高6年間テニス部にいて半端な実力しか持っていなかった俺だから言えることがある。それは『勝ち負け』だけを意識しただけの勝負で実力が拮抗すれば、負けやすいというもの。
実際に俺がそうだった。どうしても実力が同じ程度の相手に負け越してしまう。高校のテニス大会では毎度のように二回戦で負けていた。部では俺と実力が拮抗している相手がいつも俺より上のランキングだった。
当時はずっと謎だった。俺とこいつらで何が違う? なぜ気楽にやっている奴らが俺より上なんだ?
センスの差か? それとも俺の努力不足か?
それらもあったかもしれない。けれど今は『どれだけテニスを楽しめていたか』が鍵だったんじゃないかと考えている。
先程も言ったが、俺にとって勝負は勝ちが前提で楽しむものだった。これだとなぜ負けやすいか説明する。この状態だと人はネガティブなことばかり考えるからだ。俺の当時の心境を言うなら「いつラリーが終わるんだ」「早くミスってくれ」「負けたくない」といったものばかりだった。
人の心は非常に脆い。メンタルスポーツと呼ばれるテニスでこんなことばかり考えて勝てるか? 答えは否だ。
実際に俺はシングルスが弱かった。ラリーで打ち勝てる必殺のショットがあったなら話は変わったのかもしれない。しかし生憎と俺には突出した武器がなかった。俺が打つ球なんて相手がミスるのを待つものでしかなかった。
ラリーそのものを楽しめる心がない俺にシングルスは地獄だっただろう。それを持っていないのが俺の一番の弱点だったと思う。
だから偶然ではあるが、ダブルスを始めたのは良かった。一回一回のラリーは早く終わるし、ある程度点数を取れるパターンがある。やることの種類もシングルスに比べて少ない(あくまで俺レベルの話ではあるが)。
それに加え、ダブルスはペアがいたのも大きかった。俺のペアは俺より少し強かった。俺より良いショットを打つし、俺よりテニスそのものを楽しんでいた。
人間っていうのは他人のために頑張れる生き物だ。ダブルスばかりしていた俺のマインドは「こいつをここで負けさせるわけにはいかない」というものに塗り替わっていた。
もちろん負けたくないという気持ちはあったが、一回一回のプレーが早く終わるのでネガティブな考えをする暇がなかった。それに唯一、俺はペアよりメンタルが強かったので、場を盛り上げることを徹底していた。そのおかげでダブルスの勝率はシングルスより少々高かったし、勝てるから楽しめた。
部活をしていた当時の俺が例のポストを見ても何も感じなかっただろう。今、フラットな状態だから感銘を感じた。それでも遅くはないと思う。
まだ大学生活は始まったばかり(大学入学の翌日に書いてる)だし、大学ではテニスサークルにも入る予定だ。だからそこでは勝利に固執するのではなく、雰囲気、ラリー事態を楽しもうと思う。
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