秘密

せせらぎ大學(旧 中洲ノ粤犬)

夭逝

悪人……、あなたはその単語で一体何を連想されますか?

恐らくは、人殺しや麻薬密売人、強姦などの性犯罪者等を思い起こされるでしょう。

しかしながら悪人とは、実は、誰しもが己の内に、牢獄の中に閉じ込めているのです。


ある人は、大学時代、節約のためにカレーを作ろうと、スーパーマーケットで、角切りの牛肉を購入しました。しかし、遊びが好きな大学生、何日か外で活動する内に、冷蔵庫の中のことをすっかり忘れてしまったのでした。

五日ほど後のこと、喉が渇いたと冷蔵庫を開けると、目の前には消費期限が4日前に切れた牛肉が。

嗅ぐと、鼻を刺すような臭いが漂い、食べられないと、彼は判断し、ゴミ箱に棄てました。


彼は人から真面目と言われる人間でした。

しかしながら、本当に心から真面目な人間だったのでしょうか?

屠殺場で脅えて逃げ回る命を、悲鳴を、見たわけでも聞いたわけでもない。

しかしながら彼よりも、楽しく元気に生きられていたかもしれない命を殺めたのだという自覚は?

平和な毎日にかまけすぎて、重要なことを覚えられなかったのではないでしょうか。

犠牲は少ない方がいいですが、無駄になることは避けなければなりません。

そして彼は、今日もカビてしまった南瓜を棄てるという過ちを犯し、自分は本当に、救いようのない生き物なのだと再認識したのでした。


槇原敬之氏の『Happy ending』と、いう歌に、このような一節が。

「相手の喜ぶことをまず先に出来る僕にならなくちゃだめだ」

その歌が彼を少しまともにしてくれた気が、私にはします。

生きとし生けるものを尊重せずに軽んじて、目先の利益に走るのは愚かだと、朧気ながら、彼は気付きました。


「"無駄になった命は、嘆いても戻らない"

それならば、そのような結果にすることは、これから先は、何がなんでも避けなければならない。」

その為には、何かのきっかけが必要だと彼は感じました。

そして、「農家でバイト、もしくは見学をさせてもらおう。"自然も農家も汗水垂らして育て、一所懸命生きている命を頂く"と、いう生々しいリアルを感じて、責任を持とう。」と、誓うのでした。







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