推しメンBOX

メラミ

***

 学生時代から大好きだった推しのよー君。

 私は今、思い出に浸っている。

 思い出に浸るというよりかは、そっと蓋をしてしまっている最中だ。

 よー君がYORITOとして雑誌のインタビューに応えている記事の切り抜きや、数々のブロマイド。自分でオリジナルで作った小さめの缶バッジ。

 どれも今でも大好きだし、応援したい気持ちは変わらない。

 だけど、応援しているはずの彼の姿を間近に感じる出来事があった。

 幼馴染のはっちゃんことハツとジュンの結婚式で、ヨリトは親友のジュンに向けてスピーチをしていた。


 ――「これからも末長くお幸せに」


 その言葉はきっとはっちゃんにも向けて贈られた言葉だと私は感じた。

 私はその場でとてつもない焦燥感に襲われた。

 役者としてのよー君を推していた気持ちが少し揺らいだ。


「はっちゃん、おめでとう!」

「ありがとう、ルイカ」


 私は最後に式場にいた写真家の人にお願いして門の前で集合写真を撮ってもらうことにした。

 私とはっちゃん、ジュンとよー君と四人が集まって撮った記念写真。

 はっちゃんの隣でスマイルをしている私と、ジュンの隣で格好よくピースサインを決めているよー君。お互いに新婚夫婦の両端にいて近くて遠い存在。

 結婚式場での思い出。その写真まで箱にしまっておく必要があるのか、ルイカは一旦手が止まる。


「この箱はあくまでも役者としてのよー君の姿が詰まった箱なんだから。別にしておかないと」


 私は今でも彼のことが好きなのかもしれない。推しとしての彼じゃなくてひとりの理想の相手として。素に戻った瞬間、箱の中身は推しメングッズで一杯になった。


「はっちゃん、元気にしてるかなぁ。また四人で集まりたいな……」


 ――そこで私はよー君に今度こそ、告白を……っ!


 よー君の推し活は卒業します。けど心の中ではずっと彼を応援し続けたい。

 またこの箱を開けるときがくるとしたら、彼氏ができたときかもしれないと思った。

 彼氏がよー君だったらいいのにな。

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