第13話 謎の空間
目を開くと、そこは暗闇だった。
触感がない、揺られている感じ。
何も見えない、眼球の動きも感じない、奪われた感じ。
なんの匂いもしない、鼻が詰まっている感じ。
ミントの爽やかさもしない、あの気持ちの悪い味がしない。
なんの音もしない。不気味なほどに静か。
夢だとはわかっている。でも少し頭の回りが遅い。全てが曖昧。普段夢なんて見ないから、いきなりで驚いてるのかもしれない。そんな中でも頭をフル回転させる。やはり何もない。その時、何か音が聞こえる。聴力は失ったはず、訳が分からない、失っていない?
――何もない空間をただ沈んでいるだけ? その考えに達したとき、全てに対して納得がいった。さっきまでは驚いていたから気づかなかった、今ならよくわかる。
肌に当たる浮遊感。
目は開いているのに広がる黒い景色。
何も匂わないが、爽快に空気を吸えるこの感じ。
微かに残っているミント味の歯磨き粉。
閉塞感のある耳。
失っているんじゃない、ただただ暗闇の沈んでいる。
様々は思考が頭を遮る中、風の音に紛れ、やはり音が聞こえる。再度、目を閉じ、耳を澄ませる。
なんだろう、お母さん? 現実世界ではもう朝なの? 響く怒声? お願いだからそれだけは、それだけは嫌だ……。
その時、頬に手を添えられるような感触があった。驚いて目を開けると、かすかに女性の姿がある。
そして次の瞬間
「――やっとだね」
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