第8話 友達

 教室に戻ると、明日の予定や持ち物を確認して、皆所属している部活の活動元へと足を向けた。私は美術室に所属しているけど、今日は教科書という荷物があるし、近いうちに新入生に向けた部活紹介があるけれど、全て三年生である先輩がやってくれるらしいので、ありがたく帰らせてもらうことにした。

さてさて帰りますかとリュックを背負った途端、隣の席の友達であるサキが話しかけて来た。


「美凪ー! 一緒に帰ろー!」


「うん、いいよ」


サキはバイトがしたいとか何とかで帰宅部だそう。しかも家が都会の方なのに、わざわざ田舎のここまで通いに来てるとか。中学時代色々あって、近場のとこは同級生がいて気まずいらしい。

教室から駅まで、去年もずっとサキと帰っていた。高校からの知り合いで、中学時代のサキは知らないけど、明るいサキと静かな私。正直言って、相性いいと思う。

私は、あまり自分のことも話さないし、話しかけるなんてこともしないから、こういうサキみたいなタイプには、とても救われる。

教室から出ても、下駄箱で上靴を履き替えてる時も、サキは春休みに起こったことを楽し気に話す。私はそれを聞きながらクスクスと笑うのが日課となっていた。


「てかさ、新入生にかっこいい子いた!?」


校門を出たあたりに、サキは突然そう私に問いかけた。

私は、開いた口が塞がらないとはこういうことなんだと思った。必死に頭をフル回転して、入学生の顔を思い出している時、サキはまた口を開いた。


「私は~」


なんて話始めた。まあ、新入生の顔なんて覚えてなかったし、サキの楽しそうな表情は、見ているこっちも心地が良い。

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